[原子力産業新聞] 2001年6月7日 第2090号 <1面>

[原子力委員会] ITER誘致の方針決定

サイト選定今後の焦点に

原子力委員会は5日、国際熱核融合実験炉 (ITER) の我が国への誘致を念頭において同計画に積極的に参画していくとともに、均衡の取れた核融合研究開発を推進することが重要だとする ITER 計画の推進に関する委員会決定を行った。

先月17日にとりまとめられた ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) の報告書を踏まえ、委員会内で慎重に検討を重ねた結果を示したもの。

我が国の核融合研究開発は原子力委員会が定めた1992年5月の「第3段階核融合研究開発基本計画」に基づいて進められているが、ITER はこの基本計画に沿ったトカマク型実験炉であり、コンパクト化した ITER の設計についても、核融合会議が技術的要素に対して最終設計案はほぼ適当だとする判断を下している。

原子力委員会は、今回の決定の中で、将来人類が直面するエネルギー制約の中で核融合エネルギーの持つ意義や、ITER 計画の技術的可能性、我が国の国際的役割や社会的側面などを考慮したうえで、これまでの専門的な ITER に関する検討結果を適切なものと評価している。

我が国が ITER 設置国になった場合を想定し、(1) サイト選定調査を行い国内にサイトに適した地点があるかどうかの見極め (2) 欧州など他の参加極の状況把握に努め、計画が我が国にとっての利益が最大になるよう他極と協議を行うことが必要だとの認識を示した。こうした点を考慮しつつ、財源や人材確保などの課題を視野に、今後必要な判断を行うとの考えを打ち出した。

さらに、原子力委員会は ITER 計画も含め、核融合研究開発に対する評価を適切に行う必要があるとし、評価の結果や安全性などについて国民の十分な理解を得られるよう取り組んでいくことが重要だとの姿勢を示した。

5日の会合では、各委員から我が国が ITER 誘致する場合も、核融合界の研究者とともに外交関係者の共通の意識が重要であるとの意見や、発生する廃棄物や安全性の問題を中心に国民への情報提供が不可欠だとする意見が相次ぎ、こうした点を踏まえ、政府が今後の準備を進めるよう求めた。


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