[原子力産業新聞] 2001年6月7日 第2090号 <2面>

[原子力部会] 原子力の技術基盤確保で報告書

人材育成など課題に提案公募型を導入

総合資源エネルギー調査会の原子力部会は4日、原子力の技術基盤確保にむけた報告書をとりまとめた。

すでに民間で定着している原子力発電技術から、民間での事業実施途上にあるウラン濃縮、再処理、MOX 燃料加工など、さらには今後研究開発を引き続き必要とする高レベル廃棄物処分、高速炉開発といった技術を、その事業進展段階に応じて国と民間の役割分担を明確にしたうえで、諸課題を示した。

報告のなかで、国がとるべき対応策としては、最大の課題となる安全確保にむけて安全規制に有用な試験や研究の効率的な推進をはかる必要があると指摘。また、高レベル廃棄物処分や TRU 核種を含む放射性廃棄物、また MOX 燃料再処理などについては、市場や事業主体にのみ任せていては停滞の恐れがある分野として、国が主体となって研究開発を進めるべきとの考えを示している。

高速増殖炉と関連のサイクル技術、革新炉などについては、エネルギーの長期的な確保や環境問題への技術選択肢を広げる技術課題とし、提案公募型の研究開発制度を取り入れるなど、競争的な原理をテコに研究開発を促す環境整備を進めることが重要などとしている。このほか新型機開発に入っているウラン濃縮や、事業化段階を迎えている MOX 燃料加工などの技術移転を円滑に進めるようバックアップしていく必要があるとした。

一方、民間には原子力発電所などの施設について、操業や保守の安全で安定した実績の積み重ねと、それを支える組織文化の確立、保守作業の容易化など技術的対応を求めた。また事故・トラブルヘの対応にあたって事業者やプラント間のネットワークを充実強化すること、さらには技術の継承や発展にむけ、発電所の新増設にともなう建設機会の効果的活用を求めている。さらに人材確保の面から大学の機能維持や強化にむけ、原子力工学などの人材育成に奨学金を出すなどの工夫も期待されるとしている。

報告は最後に、特に国の役割を示した分野について効率的な予算配分を求めるなど、指摘した課題とその対応策の早期の具体化を求めている。

なお、この日の部会では、刈羽村で実施されたプルサ一マル導入についての住民投票結果が報告された。各委員からは「立地当初の原点に戻り地域との絆を深めるよう努めなければならない」「何が原因であるか原点に戻るべき。その反省が最初になければならない」「安全論や技術論だけではない。村が二分されるようなものをもってきてくれるなという地元の声もある。地元の議論というより、本当は国が二分するほど真剣に議論しなければいけない問題だ」など、品田宏夫刈羽村長が求めている新たな理解活動にむけた真剣な議論が必要との意見が相次いだ。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.