[原子力産業新聞] 2001年6月7日 第2090号 <3面>

[チェコ] 特別委、テメリン原発のEIA公表

近隣諸国の懸念に対処

チェコで昨年末に送電を開始したテメリン原子力発電所が周辺環境および近隣住民に及ぼす影響は微々たるものであり、受容範囲内の程度だと結論づける特別委員会の報告書 (EIA) が5月25日付けで明らかにされた。

この環境影響評価は、テメリン発電所の運転開始に反対するオーストリアとの軋轢を解消するため、昨年12月にオーストリア南部のメルクで両国首脳および欧州連合 (EU) の拡大 EU 担当委員が会談した結果、実施が決まっていたもの。作業を担当した特別委員会にはチェコの環境専門家4名に加えて欧州委員会 (EC) のコンサルタント2名、およびオーストリア、ドイツ両国のオブザーバー各2名が含まれており、報告書の編纂には32の研究・専門家機関と50名以上の科学技術専門家が協力した。評価基準は97年版の EU ガイドラインに基づいているほか、IAEA などの国際機関がこれまでに公表した調査情報も活用されたとしている。評価作業で判明した情報はまず、4月25日にチェコで開催した公聴会で公開されており、今後の交渉を継続するためにも特別委はチェコ政府に報告書を提出する際、そこでの質疑応答内容を添付資料とする考え。第2回目の公聴会は5月9日にオーストリアで予定していたが同国政府の意向により延期されている。

特別委の EIA の概要は次の通り。

同発電所による水文学的な影響は無視できる程度の受容範囲内。耐震性を含めた土壌と岩盤への影響もほとんどないと考えられる。周辺住民への影響については、通常運転であれば大気や水脈に放出される放射性物質は健康を害する被曝の原因とはならず、食物連鎖に影響するような汚染原因ともならないだろう。

建設作業が動植物や生態系に与える影響はある程度考え得るものの、希少生物や特別保護下にある種に影響するほど急速で有害な変化を引き起こすわけではないので、重要なこととは考えにくい。

放射性廃棄物の管理はその量を最小限にするのが必要条件だが、現在の濃縮技術なら重大なリスクを伴わず、実際の環境影響も最小。使用済み燃料の管理も解決不能な技術問題というわけではない。

事故の可能性に関しては、基準となるような事故を例に取り、保守的な前提条件を付けた場合でもチェコはもちろん、隣国オーストリアやドイツでも住民の健康が危険に晒されることはないとの結論に達した。緊急時計画および準備についても国際的な勧告や慣行を十分取り入れた、レベルの高いものであることが分かっている。


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