[原子力産業新聞] 2001年6月14日 第2091号 <2面>

[原子力安全委員会] 札幌市で地方安全委員会を開催

深地層研究や ITER にも強い関心

原子力安全委員会は9月、札幌市で第3回地方原子力安全委員会を開いた。「原点からの原子力安全への取り組み」をテーマに、平成12年度の原子力安全白書に盛り込まれた安全確保の考え方や防災面での対策などが説明され、会場の参加者との質疑応答が行われた。

この日、安全委からは松浦祥次郎委員長、松原純子委員長代理、須田信英委員、鈴木篤之委員が出席し会場からの質問や意見に答えた。

会場参加者からは、JCO 事故後の地元東海村での対応状況や高レベル廃棄物処分の進め方や安全規制、プルサーマル問題、ITER の安全性など幅広いテーマでの質問が相次いだ。そのなかで、東海村での事故後対応などについて「地元民の放射線の影響や健康管理はどうなっているのか」との問いに答えた松原純子委員長代理は、原子力安全委員会に事故後設置された健康管理委員会の提言と対応などを紹介、「希望する住民には健康診断を実施することや、精神的に不安を持つ方々には健康相談を行うとの提言によって、行政庁 (当時の科学技術庁) や地元自治体が相談しながら、枠組みを作り実施している」とした。

また高レベル廃棄物の処分に関して、「幌延の研究所はどういう位置づけなのか、海外に比べて日本は遅れているのか」などの質問に、鈴木委員は「どこか適切なところに300メートル以上深いところに処分する考え方になっており、深い地層がどのような状況でどのような技術で調べるかという研究が必要だ。幌延の深地層研究施設では特に日本に多くある堆積岩質の地層データが得られる」として、将来的にどこか適地に処分施設を立地する場合に、得られた知見が役立てられるとした。また海外と比べた場合、日本の高レベル処分計画は「著しく遅れているというわけではない。社会的な理解を得ていく必要があり、時間がかかるもので日本もほぼ欧米なみのプログラムを進めている」とした。

またプルサーマルの問題について「プルサーマルは本当に安全なのか。国策として進められている問題について、住民投票で決まるというのはどうなのか」との質問に対して鈴木委員は安全面について「安全委員会ではプルトニウムを原子力発電所でリサイクルすることについて基本的な要件を満たしているとの報告を出している。最も大事な要件は原子炉の燃料の3分の1までなら要件は満たされるというものだ。実際には個別の発電所ごとに審査をする。申請が出されれば安全委員会がダブルチェックを行う」などと説明した。さらに「現在、ウラン燃料で運転されている原子力発電所では副反応で出てくるプルトニウムが発電に参加している。約3分の1の発電量はプルトニウムによる」として、「最初から入れるか途中から入れるかという意味では本質的な違いはない」と説明した。

住民投票について答えた松浦委員長は「安全委員会の立場としては答えにくいが、個人的な考えでは、刈羽村で行われた住民投票は地方自治に定められた手続きを踏んでおり、その意味では問題はないものと理解している。本来的には住民投票の実施に至る前に、地元に十分説明し、プルサーマル計画への理解を得るべき」などとし、理解活動の充実強化が不可欠との考えを示した。

ITER の安全性に関し、「燃料として使われるトリチウムの安全性はどうか。廃棄物処分の考え方は現在の原子力発電所と同じなのか」などとする質問に答えた鈴木委員は「トリチウムは安全上は気をつけて取扱うべき物質だ。安全対策を講じる際、安全委員会も評価をする必要がある」などとして、今後開発の進捗に応じて、安全面での対応を進めていく必要があるとの考えを示した。また廃乗物の問題について「当然でるので安全な方法で処置が必要だ。高レベル廃棄物は発生しないので、そういう意味での最終処分は必要ない。基本的には現在の放射性廃棄物の処分の考え方と同じと理解している」とした。


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