[原子力産業新聞] 2001年6月14日 第2091号 <3面>

[ドイツ] 連邦政府と4電力会社が脱原発で署名

所定の発電枠消化後、閉鎖へ

ドイツのG.シュレーダー首相と大手電力4社は11日、両者が昨年6月14日に合意していた「原子力発電の取り扱いに関する取決め」に正式に署名し、既存の原子力発電所は個々の発電枠に達した時点で順次閉鎖して行くとともに新たな原子炉の建設を行わないことなどを確認した。

この日、反原子力である社会民主党 (SPD) と緑の党による連邦政府との取決めに署名したのは E・ON 社、RWE 社、EnBW 社、および HEW 社の首脳達。これにより独国内にある原子炉全20基は、32暦年という平均の運転期間をベースに算出された2000年1月1日以降のそれぞれの発電枠 (20基の合計で2兆6233億kW 時) に従って運転していくことになる。また、バックエンドに関しては、敷地内での中間貯蔵施設の設置、2005年6月末までは再処理を目的とする使用済み燃料輸送が確約されている。今回の正式署名を受けて、J.トリッティン環境相は近く、合意事項を盛り込んだ原子力法改正案を提出する見通しだ。

現在、ドイツでは電力消費量の約3割を原子力で賄っているが、環境省は脱原子力による不足分は太陽熱や風力など再生可能エネルギーの拡大やその他の電源のエネルギー効率強化および省エネで対応できると強調。しかし、キリスト教民主・社会同盟などの野党は、現政権のエネルギー政策は国家のエネ保障を危機にさらすと認識しており、来年秋の総選挙で勝利した場合はこの取決めを撤回し、原子力推進の方針を打ち出すとの考えを明らかにしている。

記者会見した RWE 社のD.カント最高経営責任者 (CEO) は、今回の署名によってドイツの電力会社は今後はいかなる政治的な妨害も受けずに可能な期間、原子力を利用していけると強調。最近になって使用済み燃料の輸送が再開された事実にも現れているように連邦政府は放射性廃棄物の管理および (期間限定とはいえ) 原子炉の継続運転を保証しており、双方の信頼関係が裏付けられていると指摘した。また、電力会社やその従業員、株主にとって両者の合意はすべての可能な解決策の中でも最良の選択、との認識を表明した。

一方、E・ON 社は声明文の中で、「今回の署名は連邦政府による脱原子力政策を電力会社側が認めたというより、商業的に合理性のある運転期間や妨害のない継続運転が認められたということで現実主義的な妥協に近い」とコメント。連邦政府側が主張しているような「エネルギー・コンセンサス」とは性質が異なると指摘している。


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