[原子力産業新聞] 2001年6月14日 第2091号 <3面>

[米国] NEI理事長、5000万kW 増設を提言

今後20年間の展望

米原子力エネルギー協会 (NEI) のJ.コルビン理事長は5月23日、ワシントンDCで開催した NEI 年次大会の最終日に「米国の原子力産業界は今後20年間に新たに5000万kW の原子力発電設備容量を増設すべきだ」と提言した。

同理事長がこの日披露したのは原子力産業の将来展望として NEI が策定した「2020年ビジョン」。それによると、(1) エネルギー需要の増加 (2) エネ供給の落ち込み (3) 環境面での緊急事態 (4) 継続的な経済成長−の4要素が集中することにより、産業界としては新たに一層ダイナミックな将来像を描くよう要求される。同理事長としては「個人的にもこのビジョンが必要かつ達成可能なことを確信している」と明言した上で、2020年までに産業界全体に対して望まれる状況を次のように説明した。

まず、原子力発電が安全で信頼性が高く、競争力もあり環境にも優しい電源であることが一般に広く認識されるとともに、新規の原子力発電設備5000万kW が増設され、温室効果ガスを出さない電源のシェアが3割になること。

また、既存および新規の設備を支援する国内外の原子力産業が堅固で高い競争力を持つ一方、政策立案者や一般大衆が経済成長と環境面での要件を満たすために原子力発電の継続的なシェア拡大をさらに要望することが重要だ。

さらに、原子力技術が医療や食品の殺菌、水質管理など広い分野で活用されるとともに水素燃料のように補完的なクリーン燃料の生産に貢献すること。世界規模の原子力技術開発で米国がリーダーシップを維持し続けることが望まれるとしている。

コルビン理事長はこのほか、同ビジョンのポイントを補完する役割を持つものとして実用的な戦略目標の存在に言及。NEI および原子力産業界が年間計画を策定する際に統合すべき目標として次のような項目を挙げている。すなわち、 (1) エネルギー・環境に関する内外の国家政策において原子力は必要かつ重要な要素であるとの公平な認知を得ること (2) 安全で信頼性の高い原子炉操業の維持 (3) 競争力と信頼性を兼ね備えた完全かつ堅固な原子燃料サイクルの確立 (4) 電力の競争市場における原子力資産価値の最大化 (5) 政策立案者や一般市民による原子力とその関連技術への支援拡大 (6) 現在および将来の原子力産業に必要なインフラおよび優秀な人的資源の確保−など。


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