[原子力産業新聞] 2001年6月28日 第2093号 <2面>

[原子力委員会] 米国との協力強化に期待

「原子力回帰の動き歓迎」

原子力委員会は26日の定例会合で、「わが国の原子力政策と米国の協力について」のメッセージを米国側に発信することを決めた。

今年5月に米国ブッシュ政権が発表した国家エネルギー政策で、エネルギー政策パッケージの主要な構成要素として原子力が位置づけられたことを受けて、日本としても技術開発等にむけて米国との協力を積極的に行っていく考えを明確に伝えようというもの。

メッセージには、ブッシュ政権のエネルギー政策のなかで、原子力が「エネルギー安全保障、温室効果ガス削減の観点から重要な役割が与えられている」との認識を示し、具体的に (1) 既設の原子力発電所の稼働率向上や新技術の採用による高出力化、発電所の新増設、高い固有の安全性を有する先進的な炉型の採用などによる供給能力の向上 (2) 核拡散しにくい平和利用をめざした先進的核燃料サイクルおよび次世代原子力技術を開発するとの観点からの研究・開発・利用 (3) 省エネルギー・代替可能エネルギーのなかで将来のエネルギーの選択肢の幅を広げその実現性を高める観点から、核融合研究をはじめとする科学技術の推進−等が示されているとして「このような米国の原子力への回帰にむけた動きについては注視に値するもので、わが国の原子力政策にとっても歓迎するもの」との考え方を明示した。

また米国の国際的な役割に期待するとしたうえで「原子力委員会としても、米国との原子力における協力が重要になってくるものと考えている」と米国との協力強化を呼びかけている。具体的には実用炉の高度化、先進的核燃料サイクル、革新炉の研究開発、国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画についての協力展開が期待されるとしている。

原子力委員会では、このメッセージを広く内外に発信するとともに、様々なチャンネルを通じて米国政府に伝えていく方針。

わが国の原子力開発は1950年代、その当初から発電炉開発や核燃料の供給など全般にわたって、米国との密接な協力関係のもとに進めてきている。核不拡散や国内のエネルギー事情、コストなどの面で70年代から米国では新規の原子力発電所建設が事実上封印された格好であったことから次世代炉などの発電炉開発等での日米間の技術協力も、建設をめざしての積極的な展開をとりにくい状況であったことは否めない。

5月の米エネルギー政策の発表をうけ、民間べースでは次世代炉建設を視野に技術開発協力を積極的に進める動きも出ており、今回の原子力委員会のメッセージは、今後日米間での原子力協力を進める環境づくりをねらったものといえる。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.