[原子力産業新聞] 2001年6月28日 第2093号 <2面>

[科学技術白書] 防災、廃棄物に進展

原子力分野の施策振返り

「平成12年度版科学技術の振興に関する年次報告」(科学技術白書) が19日に開かれた閣議で配布、了承された。

年次報告は科学技術基本法に基づき、毎年政府がとりまとめて国会に提出しているもの。今回の報告は、第1部「我が国の科学技術の創造力」、第2部「海外及び我が国の科学技術活動の状況」、および第3部「科学技術の振興に関して講じた施策」の3部で構成。今年3月末に第2期科学技術基本計画が閣議決定されたことを踏まえ、最新の情勢を内容に反映させた。

第1部では、我が国の科学技術がどの程度創造力をもっているかを成果と水準について国際的に比較した上で、科学技術の創造力を生み出すシステムに関して、現状と課題を分析している。

昨年10月に白川英樹筑波大学名誉教授がノーベル賞を受賞したことに触れ、世界的に優れた研究成果が認められたとするとともに、研究成果のバロメータとなる我が国の論文の数と引用された回数はともに増加していると紹介している。一方、特許の登録数は世界一であるものの、国内での登録がほとんどで、今後は世界的な視点から特許戦略を構築する必要性を挙げた。

主要国の科学技術を我が国が開発した総合指標を基に比較した場合、我が国は米国に次いで世界2位としている一方で、対外的な影響力は高水準とは言えないとの分析を加えている。

分野別に見ると、我が国の科学技術は材料・エネルギー分野ではポテンシャルが高い反面、ライフサイエンスや情報分野では欧米との差が大きく大幅な水準の引上げが望まれるとし、これら分野に対し重点的に資源配分を行うことが重要だとの認識を示した。

その上で、こうした状況にある我が国の科学技術の水準をさらに高めるためには、システム改革が必要だと指摘。科学技術に携わる人的資源の充実を図るねらいから、博士号取得者の雇用促進や若手研究者の処遇改善、若手研究者にとって魅力的な環境整備の必要性を挙げたほか、競争的資金の増大、研究施設・設備など基盤の整備、研究評価システムの改善、大学での研究成果の産業界における利用促進−などが求められると強調している。

このほか、年次報告では、第2部で統計データに基づいて我が国の科学技術活動について概観し、主要国との比較しているほか、第3部では昨年度の政府の科学技術施策がまとめられている。

原子力に関係する施策としては、まず原子力委員会が昨年11月に新しい原子力長期計画を策定したことを挙げ、原子力安全確保・防災の諸対策では、JCO 事故を受けての原子炉等規制法の改正や原子力災害対策特別措置法の制定などを取り上げている。また、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けての法律が昨年5月に成立した点などに言及している。


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