[原子力産業新聞] 2001年7月12日 第2095号 <2面>

[外務省] 原子力委員会へ国際会議報告−保障措置強化で一致

アジア・太平洋の核不拡散

外務省は10日、先月の27、28日に都内で開いた「アジア・太平洋地域における核不拡散強化のための国際会議−追加議定書普遍化に向けて−」の成果などについて原子力委員会に報告した。日本と国際原子力機関 (IAEA) の共催。現在、IAEA による保障措置の強化のために導入された追加議定書をより多くの国に締結させることが国際的な核不拡散上の急務となっているなか、この会議で、アジア・太平洋諸国を対象に日本をはじめとする追加議定書締結国が、同議定書受け入れに関する自らの経験等を説明することによって、アジア・太平洋諸国による追加議定書締結の環境を整備し、国際的な核不拡散体制の実効性を高めることがねらい。このなかで明石康日本予防外交センター会長 (元国連事務次長) が基調演説を、核不拡散問題の権威であるローレンス・シャインマン米国モントレー国際研究所核不拡散研究所長が招待講演を行ったほか、パネル・ディスカッション等が行われた。会議のなかで、参加国の一部からは、具体的に追加議定書を締結した際の国内法整備や、追加的な査察 (補完的アクセス) の実態、IAEA に提供する輸出人管理情報の詳細につき関心が示される等、活発な討議がなされたという。また、参加国の多くから、追加議定書の重要性に係わる認識が示され、その締結への高い関心が示された。

その一方で、一部の国からは、政策決定書 (軍部含む) に追加議定書の意義を認識させることの重要性が指摘され、そのための努力が不十分との認識が示された。米からは、新政権の下、署名済みの米の追加議定書の早期発効に努力している旨の説明がなされ、参加国からは、核兵器国の追加議定書締結は追加議定書未締結国に対するよいメッセージになるとして、米の早期締結への期待が示されたという。

今回の会議を通じ、アジア太平洋地域にとって、核の拡散防止が地域の安定にとり重要であり、右を維持するために IAEA 保障措置の強化 (追加議定書) が必要との認識が共有された。

イラクや北朝鮮での核疑惑が浮上するなど、核拡散防止の国際的な枠組み強化の必要性が認識され、日本も主体的な役割を果たすべく取り組みを強化している。実際に IAEA が実施する保障措置の強化をはかるため1997年に導入された追加議定書の早期発効をめざす立場から、今回の国際会議もその一環といえる。

追加議定書は、IAEA 保障措置の強化を目的とする IAEA と各国との間の二者間の国際的な約束で、この追加議定書を締結した国では、IAEA は、未申告の施設や活動による核物質の兵器転用を検知するため、直前の通告による追加的な査察等、より広範な保障措置を行うことができる。これまでに55か国が署名、うち19か国 (日本を含む) が締結している。


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