[原子力産業新聞] 2001年7月19日 第2096号 <3面>

[欧州] EC副委員長、脱原子力政策を批判

「利点の無視は無責任」

欧州委員会 (EC) で運輸・エネルギー担当委員を兼務するL.デパラシオ副委員長は5日、フランス国際関係研究所 (IFRI) がパリで開催した会合で講演し、欧州のいくつかの国で進められている脱原子力政策を批判した。

デパラシオ副委員長はまず、燃料価格の安定性やエネルギー自給、および CO2 の排出など数々の点で原子力にメリットがあるという事実を一般大衆に十分説明せず、廃棄物の処理問題のような原子力に付随するリスクのみで原子力の廃止を推し進めるのは無責任なことだと非難。「エネ価格の安定維持で原子力が果たしている役割を忘れてこのオプションを放棄すれば、地球温暖化防止のための我々の目標達成は不可能になる」との考えを強調した。

同副委員長はまた、昨年11月に EU が公表したエネ供給保障に関するグリーン・ぺーパーで原子力オプションの保持が勧告されていた点に言及。原子力は欧州の将来のエネルギー・ミックスの一角に留めておかねばならないとの持論を改めて繰り返すとともに、欧州が将来必要とするエネルギーについて世界レベルの議論をしようという時にタブーを設けるべきではないと訴えた。そして、京都議定書との関わりや変動し易い化石燃料価格などの点からも「原子力の放棄は理に適っていない」との考えを強調した。

石油に関しては、同副委員長は再生可能な資源ではないという事実を強調するとともに、「専門家の予測では世界の需要が現在のままなら石油資源は今後数百年で枯渇すると見積もられている」と指摘。その一方、産油国のカルテルによる供給管理については「安定供給の保障性が損なわれる」との見解を示した。天然ガスについても、その埋蔵資源量は石油よりも重要で、将来の供給保障性は潜在的な問題になる可能性があるとの考えを表明。EU はこの部分について真剣に考慮した上で適切な開発戦略を練るべきだと勧告した。


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