[原子力産業新聞] 2001年7月26日 第2097号 <2面>

[日米共同研究] 中間貯蔵の積極的推進を強調

将来の原子力「柔軟性」が最重要

東京大学大学院の鈴木篤之教授らと米国ハーバード大学の研究グループは13日、使用済み燃料や廃棄物問題をめぐって共同で実施した研究成果を提案としてまとめ公表した。使用済み燃料の直接処分と再処理後の処分というオプションに加え、柔軟性に富む中間貯蔵を積極的に推進することの重要性を訴えている。

研究報告書は鈴木教授を中心とする東大大学院工学系「原子力エネルギー社会工学」講座がハーバード大のJ.ホルドレン教授らとの間で過去2年間にわたり、日米や世界での中間貯蔵に関する経済性や技術的現状を明確にするとともに、政治・制度面での課題を指摘したもの。

報告書はその中で、現在、使用済み燃料管理には湿式プールから乾式キャスク方式まで広範囲の技術が利用可能で、特に安全確実な乾式キャスク方式は経済的であるとしたうえで、中間貯蔵を推進することで将来の永久処分に対して十分に時間的余裕をもって準備することができると指摘。世界的に所内使用済み燃料貯蔵能力が限界に達しつつあることから、中間貯蔵能力を増強しなければ、経済的にも環境的にも社会に深刻な影響を与えると警告している。

一方で、中間貯蔵は廃棄物問題の暫定的な解決策であって、あくまでも最終処分場建設に向けた見通しを立てることが必要と訴えている。

さらに報告書は、将来の原子力にとっては何よりも重要なのは「柔軟性」だと主張。中間貯蔵は核燃料サイクルにおける柔軟性を提供するものだとした上で、中間貯蔵自体にも複眼的に対応することが重視されるべきとしている。

日本も含め世界中の使用済み燃料の多くは、30から50年間中間貯蔵する方策が最善であり、各国で中間貯蔵能力を拡大すべきだとするとともに、中間貯蔵施設立地は柔軟性や透明性を確保した上で、民主的に行われなければならないとの主張を展開。

中間貯蔵は技術的には簡単である反面、政治的に困難さが生じるとして、国民に対してあらゆる状況で十分な情報が提供される過程を確保することが不可欠だと強調した。

そのほか、日本などは自国から出る使用済み燃料は自国内の施設に処分すべきとする一方、国際社会は中間貯蔵または最終処分施設設置を国際的な枠組みの中で追求していくことも必要だと指摘した。


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