[原子力産業新聞] 2001年8月23日 第2100号 <1面>

[三菱重工業] 南ア高温ガス炉のFS実施へ

将来の実機受注も視野

三菱重工業は17日、南アフリカ共和国の PBMR (Pebble Bed Modular Reactor) 社から小型高温ガス原子炉 (PBMR) のヘリウムガス・タービン発電機に関するフィージビリティ・スタディ実施の内示を受けたことを発表した。今年11月完了を目途に検討を実施、その結果、技術的に可能と判断されれば引き続きこの計画に参画し、PBMR の実機受注を狙う。

PBMR は出力10万kW 級の原子炉で、黒鉛球型燃料を使い、ヘリウムを冷却材として用いる高温ガス炉。炉出口温度は約900度Cで、7%の濃縮ウランを使う。出力を取り出すガスタービンならびにコンプレッサー技術の見通しを付けることが今回実施されるフィージビリティスタディの最大のポイントで、豊富な実績をもつ三菱重工のガスタービン技術が高く評価されたもの。

三菱重工が PBMR で技術的可能性を検討するガスタービンは省スペースのため縦型に配置。こうした縦型設計は他には例がないという。水蒸気を利用せずヘリウムガスで直接タービンを駆動し、45%程度の熱効率を達成するもの。ヘリウムガスの比重が軽いことや縦型ガスタービンという点で技術的未知数の部分もあるが、成立性が実証できれば画期的となる。

PBMR 社は、南ア国営電力会社 (ESKOM)、南ア政府投資会社 (IDC)、英国原子燃料公社 (BNFL)、米国の電力会社エクセロン社などの共同出資により2000年に設立された。南アでは、送電網の未整備な地域電力需要に合致する小型原子炉として1993年に PBMR 開発に着手。プロトタイプは2002年3月着工、2007年1月完成の予定で計画が進められており、他に商業炉も10基ほど計画されている。PBMR の実用化に力を入れている南アでは、今年初めから三菱重工のガスタービン開発力と原子力技術の両面から同炉開発への参画を求めていたという。

一方、米国でも建設コストが低いことや建設期間が短いことなどから PBMR が注目されており、エクセロン社が電力需要に合わせた小型炉の同一サイトヘの複数設置を狙って商業炉20基程度の建設を計画している。


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