[原子力産業新聞] 2001年8月23日 第2100号 <1面>

[原産] 来年度の予算、施策などで原子力委に要望提出

開発課題の摘出・改善など

西澤潤一会長はじめ日本原子力産業会議首脳らは10日、都内で原子力委員会と懇談し、2002年度の原子力関係政府予算編成と施策に対する要望を行うとともに意見交換を図った。

今回原産会議がまとめた要望は最近の原子力をめぐる情勢を踏まえたうえで、「中長期的なエネルギーの量的・経済的安定供給が国の安全保障の重要な要素であり、その中核的な原子力の持続的開発について国民ひとりひとりに意義と効果に対する認識を深めてもらう努力が必要」だと指摘。

将来的に退役の時期を迎える稼働中の原子力発電所が原子力で再び充当されるには、その時点で「新たな様態の原子力技術が登場している必要があり、そのための研究開発を今から進めることが必要だ」として、主体となる民間事業者の活動を国が支援するための制度が重要だと訴えている。

国や公的資金に依存した研究開発資金や原子力施設立地支援資金なども合理化や効率化が求められ、特殊法人や公益法人の見直しが図られる中で、「社会経済の変化に対応した組織体制の変革にチャレンジする時期」だとの考えが述べられている。

また、エネルギー利用と放射線利用を車の両輪として原子力平和利用を進めるにあたっては、原子力技術者や原子力事業経営者に対する一般国民の不安感や不信感を払拭して国民的支持を得るため、原子力関係者が高い倫理意識をもち、安全文化を築く必要があるとしている。

今回の要望はこうした点を踏まえ、委員会や政府に対し、来年度の原子力関係予算措置とともに政策の展開を求めた。要望に盛り込まれた項目は次の通り。

(1) 行政改革に伴う原子力開発体制の充実。原子力委員会による原子力行政全般にわたる総点検と課題の摘出・改善とともに、原子力委員会および安全委員会による積極的な国民との対話、関係省庁との連携・協力の強化 (2) 長期的エネルギー安定供給に資する原子力開発と地球環境対策の推進 (3) 国民の信頼確保・知識普及に向けた取り組み (4) 安全確保と防災対策の充実強化 (5)核燃料サイクルの確立に向けた取組みの強化 (6) バックエンド対策の積極的推進 (7) 地域共生を見据えた立地促進策 (8) 放射線利用の拡大などへの取組み (9) 原子力科学技術の多様な展開と適切な評価 (10) 長期的観点からの人材育成 (11) 国際協力の推進と核不拡散体制強化への取組み。


要望を受けた原子力委員会からは、「現在の厳しい財政状況のもとでは、メリハリをつけた予算措置が優先される」「従来からの施策の費用対効果を調べることが重要」「現在の我が国はすぐ目に見える成果を追いがちだ。原子力のように基礎を支える技術のニーズが明確化するような理論構築が必要だ」などとする意見が出された。


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