[原子力産業新聞] 2001年8月23日 第2100号 <2面>

[原水禁] 核廃絶、世紀を越えて

被爆56周年迎え

原水爆禁止日本国民会議 (原水禁・旧総評系) 主催の「被爆56周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」が7日〜9日の日程で、長崎市内で開催された。今世紀初の開催となる同大会のテーマは「核のない平和な21世紀に!」。7日には開会総会が長崎市内の長崎ブリックホールで、国内外から約2000名を集めて開催された。

冒頭、岩松繁俊大会実行委員長は挨拶に立ち、「20世紀のうちに、あらゆる核をなくそうという目標を持って活動してきたが、力足らず、核はまだ沢山残っている。新世紀のはじめにあたり、核をなくし、平和な世紀にしなければならない」と述べるとともに、「21世紀に核をなくすために、頑張りましょう」と、参加者に訴えた。

大会2日目となる翌8日には、分科会および被爆者との交流会などが行われた。その中の第3分科会「原子力政策の転換へ向けて−脱原発社会へ向けたエネルギー政策」では、「世界的に脱原発に向いている中、原子力政策を進める日本だが、どのように脱原発を進め、省エネ・自然エネを進めるか」をテーマに、藤井石根明治大学教授、吉岡斉九州大学教授、米国 NGO の原子力資料情報センターのジュディス・ジョンズラッド氏を講師に迎え、講演などが行われた。

藤井教授は講演「循環型社会に向けてのエネルギー戦略」で、「今までのように化石燃料やウランを使用するということは、循環型ではないので、長くは続かない」と展望。省エネの必要性および可能性を強調するとともに、循環型社会を構築する必要性・必然性を訴えた。

引き続き講演を行った吉岡教授は、電力自由化および社会的趨勢などといった現状から、原子力発電およびプルサーマルを含めた核燃料サイクルに対する逆風は強まっているとして、「経済的・経営的にはすでに (原子力発電利用の将来性は乏しいという) 答えは出ている」との持論を展開。今後は原子力の開発利用を積極的に推進するという路線を抜本的に路線転換する以外に道はなく、その実現を妨げているのが政治的利権構造である」と分析し、路線転換の中核をなすのが、「原子力エネルギーを優遇するような政治的メカニズムを解消すること」であるとした。

さらに同教授は、「原子力エネルギーが実力どおりに扱われるようになれば、それを敢えて選ぶ者も出てこなくなる」と予測。「声高に脱原子力を唱える必要はもうない。原子力は軍事利用技術としては超一流だが、民事利用技術としては二流以下だ。科学技術史の研究対象としては物足りない」と、原子力政策は転換するとの展望を示した。


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