[原子力産業新聞] 2001年8月30日 第2101号 <2面>

[原産] 大学教育など人材問題を検討

産官と大学との有機的連携が重要に

原子力の人材確保や育成・強化のあり方を検討している日本原子力産業会議の人材問題小委員会 (委員長・鷲見禎彦日本原電社長) の第2ワーキンググループ (WG) (主査・藤井靖彦東工大原子炉工学研所長) は27日、港区新橋の原産会議室で、原子力工学系の大学教授らを交えた拡大会合を開き、産業界や研究機関の委員らと大学教育のあり方や産業界等が抱える人材の問題点などについて意見交換を行った。

今回の会合は、原子力分野を希望する学生数が減少し学科名から「原子力」が外されるなどしている大学側と、学生の採用を希望しながらも様々な理由から実現が難しい産業界の双方が、直面している課題等を率直に話し合い、今後の WG での将来の人材確保策の検討に資するねらいで行われたもの。これまで両者間で直接こうした意見を交わす機会はあまりなかった。

この日は、10の大学から12名の教官が出席。まず東京大学、近畿大学、九州大学、東北大学の4大学の原子力工学系学部・大学院の現状が紹介された。独立行政法人化の流れや少子化の影響等による運営の厳しさから、公立・私立とも大学が学科再編などの対応を迫られる中、イメージの低下などで原子力を学ぶ学生数の減少傾向が続いていることが報告されるとともに、高校での学習内容の変化から来る学力の低下や就職先となる原子力関係機関の消極性が大学にも影響を与えるとの指摘があった。

一方、卒業生の受け皿となる産業界や研究機関からも人材確保に対する悩みが述べられた。新規原子力発電所計画の縮小などで原子力産業の将来に不透明感が漂う中、産業界でも多数の原子力専攻の学生採用に踏み切れない事情がある。こうした産業界関係者の間からは「柔軟性がありリーダーシップを取れる人材が欲しい」「大学で学んだ理論と現場の "もの" との組み合わせができる人材が必要」などとする発言がなされた。

加えて、国・学界・産業界が緊密に連携し、将来の人材確保、育成・強化策の一環として、学生などの実地教育や社員の再教育、施設利用の融通などを効率的なシステムとして実施しようとするねらいで提案されている教育・訓練機関設置の可能性に関する同 WG の検討内容についても大学関係者から意見を求めた。これに対し、教授らから「原子力教育の核としての機関を作ることで社会的にアピールすることは有意義」「原子力工学系を存続させようと努力している大学の意欲を減退させない配慮も必要」との指摘がなされたほか、フランスに見られるような有機的な原子力教育のシステムも参考になるとする意見も見られた。


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