[原子力産業新聞] 2001年9月6日 第2102号 <3面>

[欧州議会] エネ政策で報告書案を審議

グリーンペーパーの修正内容を検討

欧州議会の産業・貿易・研究・エネルギー委員会 (ITRE) は8月27日、欧州連合 (EU) 域内のエネルギー政策に関して欧州議会に提出する報告書案の審議を開始。この中で「原子力問題への現実的な対応、核融合など新しい技術の研究開発に資金投入することは重要」との見解を示している。

同報告書案は昨年11月に欧州委員会 (EC) がまとめた「エネルギーの供給保障戦略に関するグリーン・ぺーパー」などに対する欧州議会の対応を検討したもので、担当委員会である ITRE のほかに経済・通貨問題委員会、域内市場・法規問題委員会、環境・健康・消費者政策委員会などでも同様の審議を実施している。ITRE では10月中にもグリーン・ペーパーの修正事項に関する議論を終え、10月下旬から11月半ばまでに欧州議会での採決を可能にしたいとしている。

報告書案は原子力が電力供給で果たしている役割について、大容量のベースロード電源としてエネルギー・ミックスの中の重要な部分を占めているという事実を認めるとともに、年間3億1200万トンの CO2 排出削減に貢献したと指摘。EU が核融合や燃料電池など将来的な技術の開発に研究費を投じ続けることは重要との認識を提示した。

また、ITRE の委員で同報告書の提出者でもあるG.チチェスター氏は補足説明の中で、「EU とその加盟各国は、(1) 再生可能エネルギー (RES) (2) 原子力 (3) 石炭 (4) 将来の技術およびエネルギーシステムの開発−の4分野において供給保障と環境保全の両方で実効を上げるためにそれぞれの方針を独自に決めることができる」と明言。原子力については、「一部の国では人気がないが、欧州の複数の電源の中では35%と最大の発電シェアがあり、大容量のベースロード電源となるほか、温室効果ガスを出さない」などの点を強調。このように安全かつ保証された発電技術が厳しい規制の下で操業されているのに、ほかに同規模の代替エネ源がないまま我々の主力電源から故意に外してしまうのは正しい方策とはいえないとの見解を示した。

このほか RES については、各国の最終エネルギー消費と発電のシェアを増加させることは正しいことだが、例え大規模な開発目標を達成できたとしてもほかのエネ源と完全に取り替えることは期待できず、現実的になるべきだと指摘。RES による電力供給の拡大は望ましいが、エネルギーの供給保障は風力や太陽熱のように変動し易く、中断の可能性もある電源で簡単に維持できるものではないと強調した。

石炭はコストや環境影響の面で今後の利用度は下降していくものの、新たな技術開発によって一層効率的で低公害の発電が可能との考えを表明している。


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