[原子力産業新聞] 2001年9月27日 第2105号 <3面>

[IAEA] 総会で、米テロ事件契機に核物質防護の強化を決議

加盟国に努力促す

ウィーンで開かれていた国際原子力機関 (IAEA) の第45回総会は21日、原子力施設や核物質の不法な使用、破壊活動を防ぐなど核物質防護の重要性を強調する決議を採択して閉会した。

米国で11日に発生した同時多発テロ事件に鑑み、M.エルバラダイ事務局長はまず「この事件は我々すべてに対する警鐘になった」と発言。自己満足に陥ることなく、核物質の不法な取り引きや盗難の防護、攻撃に耐えうる原子力施設の設計から緊急時対応の改善まで、すべての局面で一層の努力を傾けねばならないと言明した。また、本総会では加盟各国が IAEA に対して、関連プログラムの徹底検証に乗り出すとともに核物質および原子力施設の安全保障増強のために何ができるかを見極めるよう、全会一致で要請したことを明らかにした。これらの実施にあたってはそれ相応の追加資源が必要という現実を指摘しつつ同事務局長は、「加盟各国がこの挑戦のために立ち上がると確信している」と訴えた。また、加盟各国が次のような案件 − (1) 国ごとの原子力規制システムの整備 (2) 核物質の盗難および原子力施設に対する破壊活動への適切な防護 (3) 国境その他の区域における核物質の不法な取り引きを防ぐための効果的な探知方法と機器 (4) これらの事態に適切に対処するための計画 (5) 原子力施設の安全確保問題への取り組み − などを保障していく上で、IAEA としては必要となる情報の提供や助言・指導の機能を一層強化していく考えだと強調している。

エルバラダイ事務局長はさらに、「悪意を持った人間達は近代社会におけるすべての文明や標的を害することが可能だが、我々が要塞を築いたり警察国家になるわけにもいかず、いずれにしてもこれらのリスクを念頭に置き続ける必要がある」と警告。ほかの有用な技術と同様、原子力にも脆弱な部分があり、絶対的な保障というものは存在し得ないが、原子力発電所が世界のいかなる産業施設の中でも最も安全かつ堅固な存在であるという事実を見失ってはならないと訴えた。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.