[原子力産業新聞] 2001年9月27日 第2105号 <3面>

[英国] BE社、新たに10基建設を提案

政府のエネ政策見直しで

英国の原子力持ち株会社であるブリティッシュ・エナジー (BE) 社は11日、英国政府が進めているエネルギー政策の大がかりな見直しに対し、「今後25年間で寿命を迎えた既存原子炉は新たな原子炉に取り替える」よう提案するとともに、具体的に AP1000 や CANDU-NG など新型設計炉を含めた10基の原子炉を新たに建設する戦略を政府への回答書として提出した。

現在、英国では消費電力の25%を原子力で賄っており、BE 社はまず、エネルギー供給の保障と多様化、地球温暖化防止のための英国の目標達成に原子力が大きく貢献している事実に言及。回答書を5つの章に分け、これらの目標を満たすために英国政府が取るべき行動のほか、エネルギー供給と環境保全という点で原子力と再生可能エネの両方がバランスの取れたエネルギー政策のなかで保障されるような将来計画について概説している。BE 社はまた、再生可能エネによる環境保全上の恩恵すべてを原子力で覆せるという今後の原子力開発計画を詳細に説明。その一方では、新規設備のコストという点では原子力が3位に甘んじており、原子炉の原子炉による取り替えを完全に民間セクターで財政負担する際の問題点について指摘している。各章の要点は以下の通り。

(1) 行動を起こす必要性=科学的な観点からみて地球温暖化は現実的かつ緊急の案件だが、原子力は温室効果ガスを出さずに大規模な発電が可能な唯一のオプションであり、既存原子炉が排出を抑えた CO2 は英国内の全車両が排出する CO2 総量の約半分に上っている。原子力はエネルギー供給の保障と多様化という点で頼もしい存在であり、その環境上および戦略上の恩恵により、原子力はバランスの取れたエネルギー・ミックスを構成するためのカギとなる。英国は今後も総発電量の25%という原子力シェアを維持し続けるべきだ。

(2) 適性バランスの案出=価格の不安定なガスに対して原子力は安定したベース・ロード電源。しかし、このままでは原子力設備は減少していき、ガス火力が主流となる。英国の電力市場が供給保障や環境上、経済上の目的を果たすために、政府はしかるべき枠組みを整備しなくてはならず、2025年までのエネ政策目標として、原子カシェアの25%のほか、石炭15%、ガス40%、再生可能エネ20%というエネルギー・ミックスを目指すべきだ。発電資産のリードタイムの長さを考慮すると、今すぐにでも決断を下す必要がある。

(3) 原子炉は原子炉で取り替え=サイズウェル発電所を除くすべての既存炉が2023年までに寿命を迎えるため、BE としてはこれらを2010年から2025年の間に新たに出力100万〜120万kW の原子炉10基で取り替えるという戦略を提案したい。近年、新しい原子炉設計の開発が進んでいることから、10基のうち少なくとも2基については AP1000 や CANDU-NG といった新型炉の開発が間に合うかもしれない。既存原子炉と比較して、これらの新型炉設計なら、短い建設期間と低コスト化が可能。現在の英国の電力料金の水準は18〜20ポンド/MW 時だか、新型設計炉による売電価格が25〜から30ポンド/MW 時なら引き合うと考えられ、残る問題は経済的なギャップをどう埋めるかということになる。

(4)新規建投の条件=現在、あるいは今後の英国市場で新規原子力設備の建設は石炭や再生可能エネと同様、経済性と言う点でコンパインド・ガス火力を下回る。これが経済的に引き合うようにするためには原子力の環境上その他の長所を認める長期的なプレミアムか必要。BE としては再生可能エネ要綱をモデルに炭素ゼロ責務要綱を導入して電力需要の25%を原子力で賄うよう提案する。原子力開発プロジェクトは建設リスクや国民合意、放射性廃棄物政策、使用済み燃料管理契約などの問題に取り組まない限り資金の調達は難しく、認可手続きもプロジェクトの開始時に合意された原則に基づいて進められる必要がある。

(5) 英国の今後の原子力発電=2000/01に電力価格が値崩れしたのは英国の原子力事業が赤字になったためだが、これを建て直すには BE が今後の新規建設計画で主要な役割を演じることが前提条件。BE としては BNFL の使用済み燃料再処理契約を米国式に現金払い制に変えるよう提案するとともに、使用済み燃料および関連サービスに関する96年以前の賠償責任を、現在提案されている英国損害賠償責任管理庁に移すよう提案したい。


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