[原子力産業新聞] 2001年9月27日 第2105号 <4面>

[NEI-insight] 誤った神話−原賠保険への支払い

プライス・アンダーソン法での運転者負担

神話=原子力事故時に公衆に対する損害賠償をカバーするプライス・アンダーソン法に基づく保険料金は納税者が賄っている。

事実=原子力発電所を運転する電力会社は、原子力事故時の公衆に対する損害賠償の保険料として年間95億ドルあまりを支払っている。プライス・アンダーソン法の施行から44年が経過したが、これまで1度たりとも税金が使われたことはない。

米国政府は、これまで同法に基づく保険料を1セントも支払ったことがないばかりか、原子力発電会社から原子力事故の保険料として2100万ドルも受け取っているのだ。

プライス・アンダーソン法は大規模原子力事故時の保険金を担保しており、損害賠償請求に対応できる十分な資金が積立てられている。同法律が成立した1957年以来、米国の原子力産業は、損害賠償請求 (への支払準備金) と訴訟費用として総額1億8000万ドルを積立ててきた。同法はこれまで、1975年と1988年の2度にわたり更新されたが、議会で再度更新されなければ2002年8月1日をもって失効することになる。

同法の更新は議会で超党派の支持を受けており、2月下旬にフランク・マコウスキー上院議員 (共和党、アラスカ州選出) が提出した「2001年国家エネルギー安全保障法案」には、同法律の10年間の延長も盛り込まれている。また、ピート・ドメニチ上院議員 (共和党、ニューメキシコ州選出) と10名の超党派の共同提案者と提出した「2001年原子力発電供給保障法案」でもプライス・アンダーソン法の10年間の延長を要求している。

ジェフ・ビンガマン上院議員 (民主党、ニューメキシコ州選出) は、3月下旬に13名の共同提案者と提出した「包括的かつバランスの取れた2001年エネルギー政策法案」の一部として、同法の10年間の延長を支持。ビンガマン議員は、連邦政府や納税者にはいかなる負担も生じないと述べている。

今年の3月に開催された国家エネルギー政策における原子力発電の果たす役割に関する公聴会で、エネルギー・商業委員会のビル・タウツィン委員長 (共和党、ルイジアナ州選出) は、「原子力は現在および将来的にも米国のエネルギー政策の基幹をなすものであり・・・議会がプライス・アンダーソン法の延長を認めることが重要である。同法律なしには、新規原子力発電所の建設はあり得ない」と発言した。

プライス・アンダーソン法による保障は2段構えで原子力事故をカバー。第一段階としては、原子力発電所の所有者は1サイトにつき2億ドルの保険金 (の支払い準備) が義務付けられており、第二段階として、第一段階を超えるレベルの事故1件につき8800万ドルを上限とした支払いが義務付けられている。これら2つを合わせて95億ドルあまりが補償される。


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