[原子力産業新聞] 2001年9月27日 第2105号 <5面>

[概要] 高レベル放射性廃棄物処分地選定プロセスの考え方

原子力発電環境整備機構−資料から

既報のとおり、原子力発電環境整備機構は、高レベル放射性廃棄物の処分地選定手順を経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会原子力部会・専門委等に示した。3つの段階で適地選定を進め、情報公開を積極的に進めてプロセスの透明性をはかるとともに、処分地の地元振興等を積極的に検討していく方針を明らかにしている。今号で原環機構が示した資料をもとに同手順の概要を紹介する。


3段階に分け選定へ

処分事業は、概要調査地区、精密調査地区及び最終処分施般建設地 (以下「概要調査地区等」という。) の選定、最終処分施設の建設、最終処分、最終処分施設の閉鎖そして閉鎖後管理と進められていく。

その最初にして最大の課題は、概要調査地区等の選定であり、以下の記述は、その選定の過程の透明性を確保するとともに、広く国民、地方公共団体および各地域の人々の理解協力を求める観点から、原環機構が概要調査地区等を選定する方法、時期等を含め、基本的な手順を説明するものである。

1.概要調査地区等の選定の重要性

特定放射性廃棄物の深い地層への処分は、これを受け入れてもらえる適切な地域があって、はじめて可能となる。そのため、最終処分法では、当該地域の住民等の理解と協力を得ながら、段階を踏んで概要調査地区等の選定を進めることを規定している。また、受け入れてもらえる地域に対しては、処分事業の実施に伴い生じ得る経済的効果とは別に、選定の各段階に応じて、その地域の発展や生活環境の改善に寄与する施策が講ぜられるべきであり、原環機構としては、地元の状況に応じた施策について地域の皆様と協議、検討し、その実現に向けて努力していきたいと考えている。

2.概要調査地区等の段階的選定

概要調査地区等選定の最終目標は、特定放射性廃棄物の最終処分施設建設地の選定だが、地域住民および国民の理解協力を得ながら、計画的かつ確実に概要調査地区等を選定する観点から、最終処分法では、3つの段階を経るべきことを定めている。各段階ごとに精査が行われることにより、適地が絞られ、最終的に最終処分施設建設地が選定されていくことになる。

(1) 第1段階 (文献その他の資料調査による概要調査地区の選定)

原環機構は、概要調査地区に応じてもらえる地区およびその周辺の地域について、過去における地震、噴火、隆起、侵食等に関する記録、文献その他の資料により、法令で定められた事項について調査 (文献調査) を行い、調査を行った地区の中から概要調査地区を選定する。原環機構としては、平成10年代後半を目途とする。

(2) 第2段階 (ボーリング等の調査による精密調査地区の選定)

原環機構は、概要調査地区について、地表踏査 (地表面の現場調査) 、物理探査 (人工震源、電磁波等を利用して、空中、地上又は水上から行う地下の調査)、ボーリング、トレンチの掘削 (地表に溝を掘って行う調査) などの方法によって、法令で定められた事項について調査 (概要調査) を行い、概要調査地区の中から精密調査地区を選定する。国の最終処分計画に従い、平成20年代前半を目途とする。

(3) 第3段階 (地下施設を設置して行う調査による最終処分施設建設地の選定)

原環機構は、精密調査地区について、地下施設を設置して、地層を構成する岩石の強度調査、地層内の水素イオン濃度の測定、地下水の水流の調査などの方法によって、地層の物理的及び化学的性質等について、法令で定められた事項について調査 (精密調査) を行い、精密調査地区の中から最終処分施設建設地を選定する。国の最終処分計画に従い、平成30年代後半を目途とする。

それぞれの段階で次の段階に移行する過程では、後述のように、最終処分法で、原環機構は、段階ごとの調査結果を報告書にまとめ、公告・縦覧等を行い、これに対する住民の皆様方等のご意見に配意し、経済産業大臣は、概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重して、地区に係る選定を承認しなければならないことになっている。

なお、調査にあたっては、地域の住民の理解と協力が不可欠と考えており、各年度ごとに調査計画の事前説明及び事後報告を行うとともに、関係都道府県及び市町村等により立入調査 (状況確認) の申し入れがあれば、それに応じていきたいと考えている。

3.第1段階 (概要調査地区の選定)

概要調査地区選定の手続きは、最終処分法及び同施行規則で定められている。これらに従いながら、原環機構としては、具体的に次のような手順で選定を進めていきたいと考えている。

(1) 概要調査地区の公募概要調査地区は、公募することとし、公募に応じていただいた地区及びその周辺の地域について文献その他の資料による調査を行い、その地区の中から概要調査地区を選定したいと考えている。

応募の主体は、市町村 (連合体を含む) としたいと考えている。公募は、平成14年度を目途に条件が整い次第開始したいと考えている。原環機構としては、公募前、公募中にかかわらず、ご質問・ご要望等があれば、自治体の皆様方等に対し説明する。

(2) 公募の方法

公募に当たっては、「応募要領」、「処分場の概要」及び「概要調査地区の選定上の考慮事項」並びに「地域共生の取組み方」 (いずれも仮称) を公表する。

「応募要領」には、応募の方法、文献その他の資料による調査の内容などを記載すると同時に、公募に応じてもらえるよう、説明の実施等公募に関する事項を詳細に盛り込む予定だ。最終処分施設は、地域の地質等の環境や立地場所の状況により地上施設の配置等が変わることが考えられる。このため、「処分場の概要」には、その状況に応じた最終処分施設の仕様及び概念図、安全性、輸送手段など、概略的な全体像について、"処分場概念カタログ" の形でいくつかの例を取りまとめたいと考えている。特定放射性廃棄物は、地下の深い安定した地層中に埋設処分する必要がある。このため、「概要調査地区の選定上の考慮事項」には、地層の著しい変動の記録、未固結岩の記録、鉱物資源の記録などど3.(3) で述べる法令に基づく選定要件を基本として、原環機構が概要調査地区の選定に当たって考慮すべきと考える包括的な諸条件を取りまとめたいと考えている。原環機構は、国民の皆様及び地域の住民の皆様方とともに歩みたいと考えており、「地域共生の取組み方」には、将来にわたっての地域共生についての考え方を取りまとめたいと考えている。

(3) 概要調査地区の選定の要件等

最終処分法及び同施行規則により定められている概要調査地区の選定要件は、次のとおり。

文献その他の資料による調査を行うことによって、要件に適合しているか否かを評価する。地震等の自然現象による地層の著しい変動の記録がないこと。

将来にわたって、地震等の自然現象による地層の著しい変動の生ずる恐れが少ないと見込まれること。

最終処分を行おうとする地層が第4紀の未固結堆積物 (約170万年前以降に堆積し、著しく強度が劣る地層をいう) であるとの記録かないこと。

最終処分を行おうとする地層において、その掘採が経済的に価値が高い鉱物資源の存在に関する記録がないこと。

(4) 概要調査地区選定のための手続き (後略) (主な選定の手続きを含めた手順の概要を右図に示す)。


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