[原子力産業新聞] 2001年10月4日 第2106号 <2面>

[原子力防災] JCO事故から2年、原子力防災対策着実に進展

27日に泊で総合訓練

JCO 東海事業所で発生した臨界事故から2年を経過し、小泉純一郎首相は9月28日、閣議後の閣僚懇談会で、「この2年の間、政府としても原子力防災対策の強化に努めてきたところであるが、米国でのテロ事件の発生という新たな事態を踏まえ、一層の緊張感をもって対策に万全を期すよう」関係閣僚に指示。経済産業省では今月27日に北海道電力・泊発電所で、完成したオフサイトセンターを活用した初めての総合防災訓練を実施する。文部科学省では原子力を含めて災害対応の拠点となる非常災害対策センターをオープンし、10月1日から運用を開始、このほかマニュアル整備や関連資機材の整備も関係省庁や自治体などで進んでいる。

平沼赳夫経済産業相は9月28日閣議後の会見で、北海道電力・泊原子力発電所で実施予定の国の原子力防災訓練を、今月27日に行うことを明らかにした。

原子力災害対策特別措置法に基づき国が行う防災訓練は、昨年10月に中国電力・島根原子力発電所で行われたものに続いて2回目だが、緊急事対応急対策拠点施設 (オフサイトセンター) を利用した国の訓練が行われるのは、初めてのこと。

訓練は、「泊原子力発電所1号機 (PWR、57万9000kW) の一次系小破断ならびに全系列の非常用炉心冷却装置の故障が発生し、格納容器圧力が上昇。発電所敷地境界外に放射性物質が放出される」事故を想定して行われる。特別措置法に基づき、小泉純一郎首相を災害対策本部長に、関係閣僚および関係省庁や北海道、地元市町村、北海道電力および地元住民などが参加。小泉首相の原子力緊急事態宣言に続き、対策会議の開催や住民避難なども行われる、大規模なものになる予定だ。

また会見の席上、平沼経済相は、記者団からの「泊原子力発電所での訓練では、対テロという観点からの訓練も行われるか」との質問に対し、閣僚懇談会時の首相の談話の中にも、テロを踏まえた原子力防災対策に万全を期してほしいとの言葉があったことなどから、「テロにも我々は考慮した安全体制というものを訓練していかなければいけないと思っている」と述べた。なお今回の訓練では、具体的なテロ対応は盛り込まれないものの、「時節柄、テロ問題も含めて、より一層緊張感を持った訓練を行う (経済産業省)」計画だ。

また、文部科学省は原子力の事故災害や地震・風水害等の自然災害時に、災害対策本部とともに事務局等を設置するための施設として「文部科学省非常災害対策センター」の供用を一日から開始した。

設置場所は、東京・千代田区霞が関の同省分館。6階に床面積200平方メートルのセンター部分、地下1階に機器室が置かれている。

原子力事故発生の際には、原子力災害対策特別措置法に基づいて、現地のオフサイトセンターを中核として専用の通信機器で結び、国や自治体、関係機関が迅速な防災活動を進める。こうした場合、文部科学省では非常災害対策センターを対応の拠点とする。

センターは国の防災計画で定められたオペレーションセンターとしての条件を満たす十分なスペースとともに機材を完備。専用回線による電話・ファックスのほか、原子力災害対策本部となる首相官邸や安全委員会、経済産業省緊急時対応センター、各オフサイトセンター、自治体など、最大で8地点との交信が可能なテレビ会議システムを備えている。このほか、SPEEDI システム端末、気象情報システム端末なども整備されている。

9月21日には文部科学省が、今年度補正予算編成にあたって必要な施策をとりまとめ、原子力施設のテロ対策の強化として、原子力施設へのアクセス管理強化や同時多発テロに向けた警備員増員等構造改革を加速するために特に緊急性の高い施策を盛り込む方針を示している。

原子力安全委員会の松浦祥次郎委員長は今月1日開いた定例委員会で、こうした関係省庁や自治体等の原子力防災への対応を聞いた後、国や自治体、事業者等の取り組みが進んでいることを評価する一方で、「事故の教訓を風化させることなく、これらの対策を着実に実施して安全確保に万全を期してもらいたい」とした。また、安全確保の要である同委員会として防災対策の着実な推進をはかっていく考えを強調した。

なお、松浦委員長は、米国同時多発テロ事件を受け、原子力施設の警備強化をはかる検討が進められている点に関して、「まず防災対策をしっかりとやることが重要」とし、防災関連対策の充実をはかることで、こうした危機管理対応の強化にもつながるとの考えを示した。


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