[原子力産業新聞] 2001年10月4日 第2106号 <3面>

[米国] NRC、同時多発テロで原子力施設の安全性強調

第1級の警備体制指示

米国原子力規制委員会 (NRC) は9月21日、同時多発テロ事件の発生を受けて国内の原子力発電所および原子燃料施設が適切に防護されるよう同委の委員達やスタッフが24時間体制で連邦捜査局 (FBI) その他の調査機関、警察当局、原子力発電会社、軍、州政府、地元自治体などと緊密に連携して作業に当たったことなどを明らかにした。

テロ事件の発生直後、NRC では直ちに国内の原子力発電所で第1級の警備体制が取られるよう指示。これらの施設における迅速な対応を確認した後、そのままこの体制の維持を促したとしている。NRC としては継続して事態の推移を見守っていくほか、適切と思われる警備対策の調整を実施する用意があるとし、同委のR.メザーブ会長は委員会の全面的な支援のもと、NRC の安全保障規制および手続きの見直しをスタッフに指示したと言明している。

また、テロ事件の後、多くの報道関係者や一般国民から原子力関連施設の安全性に関して多くの質問が寄せられたとしており、それらに対しては次のように回答したことを明らかにした。

---大型の民間航空機が意図的に原子力発電所に衝突した場合、どうなるか?

NRC 原子力発電所は堅牢な格納建屋や複数の安全システム、よく訓練された運転員など、一般市民の健康や安全を守る能力を内在している。米国内でも最も頑丈な構造物の1つであり、ハリケーンや竜巻、地震などの災害にも耐え得るよう設計されている。また、NRC から放射性物質の取扱認可を受けた事業者達は放射性物質の放出を伴う事象に際して影響の軽減を図れるような緊急時計画を準備している。しかし、NRC としてはボーイング757や767などの航空機が衝突する可能性は特に予想しておらず、原子力発電所はそれらに耐えることを考慮して設計されていないし、大型航空機の衝突に関する詳細な工学的分析もまだ実施していない。

---このような潜在的な脅威に対して NRC とその認可を受けた発電所ではどのような対策を取っているか?

NRC テロ事件の発生直後、NRC では第1級の警備体制を敷くよう指示したが、具体的な行動内容については当然のことながら機密扱い。概略を説明すると、パトロールの強化や警備要員、能力の増強、保安ポストの追加、警察関係機関や軍当局との高度な連携、施設区域への車両や人の入場制限などだ。

---テロ事件に際して NRC は具体的にどのように対応したのか?

NRC 9月11日の午前10時、NRC は本部にある緊急オペレーション・センターを起動し、上層幹部や専門家によるチームを編成した。4つある地方支部でも同様の行動が取られたほか、NRC の認可を受けた事業者には最高レベルの警備体制の必要性を通達した。また、FBI、エネルギー省 (DOE)、連邦緊急管理庁 (FEMA) などの機関と連絡を取るとともに、FBI の戦略情報オペレーション・センターには人員を派遣。カナダ、メキシコの原子力規制当局とも緊密な連携体制を取った。

---大型航空機が使用済み燃料の乾式貯蔵キャスクに衝突したらどうなるのか?

NRC この種の衝突に対する使用済み燃料用キャスクの耐久性はまだ分析していない。しかし、ハリケーンや竜巻、地震など過酷な影響に耐え得る頑健さを備えているため、キャスクの外壁が破られるような事態になっても影響は局所的にくい止められると考える。

---原子力発電所や使用済み燃料の貯蔵用、輸送用キャスクでこの種の衝突が起きた場合、核爆発を引き起こすか?

NRC それはない。

---ウラン燃料サイクル施設に衝突した場合は何が起きるか?

NRC 核物質の性質上、敷地外への影響は最小限あるだけと考えられるが、外部に核物質が放出された場合は包括的な緊急時対応手続きが直ちに取られることになる。

---商業炉の通常の警備対策はどのようなものか?

NRC NRC の認可を受けた事業者に要求される保安プログラムには次のようなものが含まれる。例えば、武装した民間防衛力、物理的な障壁、探知システム、立ち入り制限、警報ステーション、綿密な対応戦略などだ。NRC は通常の原子炉監視手続きの一環として常時警備対策の査察を行っているほか、脆弱な部分の洗い出しおよび改善など様々な実地訓練も定期的に実施している。


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