[原子力産業新聞] 2001年10月11日 第2107号 <2面>

[シンポジウム] 電力生産地と消費地が対話

理解促進にむけ

東京商工会議所と柏崎商工会議所が主催した「エネルギーシンポジウム〜電力消費地と生産地の相互理解を目指して〜」が5日、東京都千代田区の東京會館で開催された。

東京電力の柏崎刈羽原子力発電所でのプルサーマル導入に関して刈羽村で行われた住民投票の結果を踏まえて、電力の消費地と生産地の相互理解を深めるために行われたもので、柏崎市、刈羽村の地元からの参加を含めて約900人が参加した。

冒頭、あいさつした経済産業省の西川太一郎政務官は、エネルギー安定供給を支えるうえでの消費地と供給地の対話促進の重要性を述べるとともに、「国民に広く理解を得ることが重要」として、シンポジウムを機に議論と理解が深まることに期待感を示した。続いてあいさつを寄せた石原慎太郎東京都知事は、首都圏での約4割の電力が原子力発電に依存している状況を示し、消費地側の理解向上の必要性を示した。また国際的にも日本の原子力発電の安全管理の水準が高いとする一方で、JCO 事故等を踏まえ国、関係者に一層の安全管理を求めた。西川正純柏崎市長は「それぞれ地域の役割分担を果たしていくことが必要」などと述べ、電力生産地と消費地が相互に交流を深め、認識を共有するべきとした。平山征夫新潟県知事も会場にかけつけ、プルサーマル問題を含めてエネルギーの問題について「国民1人1人に考えてもらいたい」と訴えた。

パネル討論の前に「エネルギーの現状と今後の消費地・供給地のありかた」について基調講演した東京大学名誉教授の茅陽一氏は総合資源エネルギー調査会でとりまとめたエネルギー政策の考え方や世界と日本のエネルギー事情を紹介。そのなかで、同氏は電力の生産地と消費地の役割を認識しなから、エネルギーの安定供給を確固としたものにしていくことが文明社会の大きな課題との考えを示した。

引き続き行われたパネル討論では、コーディネーターを茅氏がつとめ、パネリストに東京農工大学教授の柏木孝夫氏、作家で「フォーラム・エネルギーを考える」企画運営委員の神津十月氏、柏崎商工会議所副会頭 (株式会社サイカワ社長) 西川正男氏、東京商工会議所議員 (株式会社荏原製作所会長) 藤村宏幸氏、東京商工会議所渋谷支部会長 (渋谷地下街株式会社相談役) 鈴木育延氏の5名が参加した。生産地を代表して発言した西川氏は、柏崎市が原発誘致を決議して以来の経緯を紹介、「エネルギー政策が国策であるのに電力生産地だけが議論の渦中におかれた」「電力消費地の理解がなくては合意形成は図れない」などと述べ、消費地の理解向上が不可欠であるとした。柏木氏は東京のエネルギー事情を紹介したうえで、「一次エネルギーの基底的な部分を原子力が支えている。東京でもそうした状況は同じだ」と、原子力発電が首都圏の生活基盤を支えている重要なエネルギーのひとつであることを示した。藤村氏は「生産地の人たちとの認識共有を図らねばならない」として生産地と消費地の相互交流、相互理解が欠かせないとの考えを示した。鈴木氏はIT (情報技術) の進展などの例をあげて「生活環境の変化による電力消費増は今後も避けられない」との認識を示し、電力の安定供給に都市活動が支えられているとの認識を示した。また神津氏は「消費地と生産地を結ぶ何らかのシステムがほしい」とし、茅氏も「電気や水などを大事にする感覚が薄れてきている。生産地の苦労を体感するため見学会などを組織的に行っていくべき」とした。


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