[原子力産業新聞] 2001年10月11日 第2107号 <4面>

[理研] 重粒子線で品種改良-花持ちよいバーベナ種

突然変異を誘発

理化学研究所は4日、重イオンビーム (重粒子線) を利用して花持ちがよい「バーベナ」の品種改良に成功したと発表した。

理研では、リングサイクロトロンで発生させた重イオンビームを用いた植物の突然変異の誘発に関する研究を続けてきている。重ビームイオンによる突然変異誘発では、花色変異株や耐病性株、環境耐性株などを高い確率で得られるという。また、自然界で起こる宇宙線等が誘因となる自然突然変異とも原理が同じであるため、重ビームイオンでの突然変異誘発は新技術として関心が高まっている。

これまで、理研ではタバコで新しい株の開発に成功してきていたが、今回バーベナに応用し従来品種よりも花持ちを良くすることなどに成功したもの。研究には、サントリー基礎研究所の協力を得て、理研植物機能研究室の吉田茂男、阿部知子研究員らが携わった。我か国では、エネルギー線を利用した植物の育種開発への取組みが積極的に進められ、過去数年はエネルギー線の中で最も影響の大きい重イオンビームが新しい変異誘発技術として注目を集めてきている。

今回の研究では、バーベナに窒素イオンビームを照射。その結果、従来品種の持つ有用な形質は維持したまま、花持ちの良さや花房数の増加などの新しい性質を得ることに成功した。

理研では重イオンビームによる新しい育種法では初となるバーベナの商品化に期待を示している。


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