[原子力産業新聞] 2001年11月1日 第2110号 <3面>

[IAEA] テロ防止で活動見直し

保安サービスの範囲拡大へ

国際原子力機関 (IAEA) のM.エルバラダイ事務局長は10月22日、ニューヨークで開かれた国連総会で、原子力関連施設や核物質に係わるテロリズムを防止するため IAEA としては最善を尽くす考えであると強調した。

同事務局長はまず、9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件は各国が原子力開発計画を管理する不可欠な部分として警備体制を強化しなければならないとの注意を喚起するきっかけになったと指摘。このような努力を支援するため、IAEA は放射性物質に係わるテロリズムを阻止するすべての活動およびプログラムの徹底的な見直しを開始していると報告した。

IAEA では現在、物理的な防護体制の強化、核物質や放射線源などの違法な取り引きの防止、原子力施設の安全性促進、放射性物質の非平和利用に対する保障措置、緊急時対応など原子力テロリズムに対抗するためのさまざまな活動に取り組み中。これらのプログラムのそれぞれに関して、テロ事件と照らし合わせて追加で必要と思われる対策を特定するための掘り下げた審議、特に、IAEA による保安・安全サービスの適用範囲と程度の拡大などが検討されている。また、核物質防護条約のような既存の条約や指針についても、それらの包括性や効果を再検証するとともに普遍的な適用を確証する努力を行うとしている。

同事務局長はさらに、保安システムの強化に必要な財源が不足している加盟国を支援できるよう、IAEA は原子力テロリズムに対抗するための基金設立の可能性を模索していることを明らかにした。このように特殊な脅威に対しては特殊な対応が必要との観点から、「核物質の盗難や破壊工作、テロリズムの発生防止を目的とした効果的かつ世界的な規模を持つシステムの構築こそすべての関係者にとっての最優先事項だと信じている」と訴えた。


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