[原子力産業新聞] 2001年11月15日 第2112号 <1面>

[ITER計画] 政府間交渉、正式にスタート

サイト選定、来年中頃に

国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画の第1回公式政府間協議が8日と9日の両日、カナダ・トロントで開催され、我が国をはじめ、欧州連合 (EU)、ロシア、カナダとの間で ITER 計画の共同実施に向けた交渉が正式に開始された。関心の集まる ITER 建設サイト選定の議論と並行して、2002年末を目指し計画実施に必要な国際協定の文書作りに向け精力的に協議を継続していくことが確認された。

7月に工学設計活動 (EDA) が終了したことを受け始まった政府間協議は、(1) プロジェクト共同実施のための協定骨子 (2) 費用分担や調達配分の考え方 (3) サイト共同調査の実施方法 −に対する検討が行われた。

国際法に基づいて策定される同協定の中には、ITER の建設の進め方やその後の運転・研究段階、さらに廃止措置段階に関わる具体的な取り決めが盛り込まれる。協議を通じて2002年末までに協定の最終案をまとめ、03年には各国が承認手続きを行う予定になっている。

これと並んで、各参加国間の費用分担も計画実施を左右する重要な要素だ。従来、炉の設置国が全体の50%、残りの50%を残る2つの極が25%ずつ負担するといった方式が検討されてきたが、現在では必ずしもこうした比率にこだわらず、「各国がバランスよく計画に貢献する」といった柔軟な考え方に移ってきているという。

また、実験炉の建設地の最終決定に向けたサイト共同調査については、技術的や社会的要素に基づいて項目分けして候補サイト毎に比較調査することで合意された。

こうした合意事項に必要な作業を進めるため、各国2〜3名で構成する実務者グループを設けて実施していくこととあわせて、次回の政府間協議を来年1月に東京で開催することが決められた。


トロントでの協議では参加国からサイト候補地選定をめぐる最新の状況が紹介された。カナダはクラリントンをサイト候補地として積極的に推進しているが、我が国にとって最も気になる欧州はまだ最終的な候補地の決定段階にはないというのが実情だ。

先月30日のEU研究相理事会でフランスからカダラッシュをサイトにしたいとの提案がなされたことを踏まえ、EUは今後、研究担当委員が各国と協議して ITER の欧州誘致に動くと見られるが、この場合、EUとしての予算では不足することから、フランスが追加負担を行うことが確実となっている。このほか、スペインもバルセロナに誘致の意向を示していることが明らかになったが、EUの候補地としてはカダラッシュが先行している。

我が国からは、「那珂町と六ヶ所村が適正を有している」との先月取りまとめられた国内候補地適性調査の結果が紹介された。

今後のスケジュールとしては02年中頃までに候補サイトが出揃うことを一応のメドとしていて、実際に建設サイトが決定するのは来年中頃以降にずれ込む公算が強い。


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