[原子力産業新聞] 2001年11月15日 第2112号 <2面>

[原研] "未来を創る光" などテーマに報告・講演の会を開催

研究開発、多様な展開はかる

日本原子力研究所は8日、21世紀記念「報告と講演の会」(関西) −新世紀の船出-を京都市内で開催した。「なぜ今原子力研究−未来を創る光・情報・エネルギー研究」をテーマに同研究所が進める先端レーザー研究や計算科学技術の進展によるネットワーク型の新たな研究スタイルの構築などの研究報告が行われた。また、「異分野最先端科学の出会い−次世代研究者への期待をこめて」と題してパネル討論が行われた。

冒頭、村上健一原研理事長など「創立45周年を迎えて」と題する基調報告のなかで研究開発の歩みを振り返り、「これまでの成果は有形無形の形で原研、さらには日本に蓄積され、社会に貢献している」とし、今後、原子力エネルギー研究と総合的原子力科学研究の2つの柱で多様な展開をはかっていく考えを示した。

また「先端レーザー・放射光で拓く新しい科学技術」について報告した関西研究所の加藤義章所長は、同研究所が進めている先端レーザーと高輝度放射光の研究開発の現状を紹介。

報告のなかで現在関西研究所が開発中の小型で高出力、超短パルスレーザー装置をとりあげ、広範な応用分野のなかで特に医療分野への将来性を示した。同氏は、同装置の開発により得られた技術が、がん治療に優れた特性が知られる重粒子線がん治療装装置の小型化にむけたキーテクノロジーになるとの期待を示すとともに、高品質のエックス線レーザーを発振させることによって薬を体内の特定の部位に届ける薬剤誘導や、将来的にエックス線の高速立体イメージング技術の開発につながる可能性を持っていることを示した。

また兵庫県に設置、稼働して以来、広範な分野に先端研究の成果がみられている放射光利用技術についても、光磁気ディスクの高機能化など情報技術の進展につながるマンガン酸化物の電子構造を解明する新技術の開発や、低線量放射線のリスク評価などに寄与する DNA 修復メカニズム観察といった新たな展開が期待されるとした。

また同研究所の淺井清理事は「ネットワークを利用した新しい研究スタイルにむけて」をテーマに報告を行い、情報技術等の飛躍的な発展をベースとして、国際的に広域ネットワークを結んで研究開発を進める新たな研究スタイルが可能になってきている状況を紹介した。すでに原研では核融合分野で日米の関係研究機関、大学を結んだ計算機ネットワークでの共同研究を実験的に進め、その有効性を確認している。

同氏は、国内外で異分野の研究者らをネットワークで結んで、新たな技術の芽や産業の創出につながる可能性を示すとともに、情報技術をべースにしたネットワーク型の研究拠点として、関西研究所に来年3月 ITBL センターが竣工し、運用を開始する予定であるとした。


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