[原子力産業新聞] 2001年11月22日 第2113号 <4面>

[報告] 韓国、放射線使い染色廃液処理

実用化に向け試験プラント

ソウルから30分余り南に飛ぶと韓国第三の都市大邱 (テグ) 市がある。そこに約100の関係企業が集まる韓国最大の「染色工業団地」がある。

染料を含む濃く着色された染色廃液の脱色と BOD (生物的酸素要求量−水の汚染を示す指数) を低下させることは従来法では容易でなく、コストもかかる。

そこで、三星 (サムスン) 社は電子ビームで染色廃液を照射し、脱色すると同時に照射後の生物処理で BOD を効果的に低下させる方法の開発に取組み、現在この染色工業団地の廃水処理施設にパイロットプラントを設置し、1MeV、40kW の電子加速器で1日当たり1000立方メートルの廃水処理を行っている。この処理で通常の前処理 (高分子凝集剤) なしで、より高度な脱色が可能になり、そのあとの生物分解がより完全になるとともに、分解処理時間が3分の1以下に短縮できるなどの利点が実証されている。

今後は10倍のスケールアップで1万立方メートル/日の処理量のデモンストレーションプラントを建設する計画である。加速器は1MeV で400kW を使用した3つのビームスキャナーをつける。

総建設費400万米ドルで染色工業団地が150万ドル、大邱市30万ドル、国際原子力機関 (IAEA) 30万ドル、三星社50万ドルの拠出が予定されているが、残り140万ドルの政府の拠出部分が決まっていないという。

この計画が実現すれば、世界初の「放射線による廃水処理の実用化」となることから、関係者の注目を集めている。(町 末男)


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