[原子力産業新聞] 2001年11月29日 第2114号 <2面>

[産官学連携サミット] 新たな価値創造へ産官学連携

総合科技会議、システム改革を提唱

内閣府、経済団体連合会ならびに日本学術会議が共催する「第1回産学官連携サミット」が19日、東京・千代田区の経団連会館で開かれ、産学官を代表する参加者が今後の協力のあり方などで議論を交わした。

シンポジウムは、我が国が掲げる科学技術創造立国の実現を目指し、政府・学界・産業界の三者が連携を強化し経済再生に効果的な機構の構築に向け、各機関のトップによる意見交換と相互理解を通じて連携推進の環境づくりを図ることがねらい。この日、会場には尾身幸次科学技術政策担当大臣や今井敬経団連会長、吉川弘之学術会議会長をはじめとし、政府高官、企業経営者、大学・公立研究機関の長ら各界の関係者約300人が集まった。

シンポの中で、文部科学省や経済産業省の取組みのほか、大学における改革の方向性について意見が紹介されるとともに、効果的な連携体制のあり方などをめぐってパネル討論が行われた。また最後には、この日の議論を踏まえ、我が国が地球規模での課題を解決するためには、個人の自由な発想と創造力を発揮できる柔軟な社会を通じて我が国の持つ潜在力を十全に活用することが必要だとする、三主催者代表による共同宣言が採択された。大学等の研究能力と産業の生産能力の中にある潜在力を、硬直化した制度や当事者の認識不足のため不十分だった産学官連携を進展させることが急務だとしたうえで、(1) 産業界が大学等の知的ポテンシャルを積極的に活用することや、企業トップが大学等との連携を経営戦略上明確化し研究開発での連携や人材交流を促進すること (2) 大学等が、教育研究の進展にも企業との連携強化に向けた組織的対応を図ること (3) 国が産学の相互連携を促進に向けた制度改革を図ること−などを求める内容だ。


欧米に比べ産学官連携の基盤が弱いといわれる我が国は、三者が有機的に機能した新しい価値創造のためのシステム作りはどうあるべきか、総合科学技術会議・科学技術システム改革専門調査会のもとに設置された産学官連携プロジェクトがこれまで7回にわたる検討を進め、このほど中間とりまとめを実施。19日のサミットでは、同プロジェクト座長をつとめる佐々木元・日本電気会長が基調講演の中で、内容を紹介した。

我が国は今後、新しい原理の発見や新技術を自らが開拓、実用化していくため、大学などでの基礎研究成果の積極的な活用を図り産業に結び付ける必要があるとの基本認識に立ち、我が国での産学官連携が十分に進んでいない状況を分析したうえで、(1) 共同・委託研究の促進方策 (2) 技術の指導や移転等を促進方策 (3) 大学を起点とするベンチャー企業の創出 (4) 産学官の人材交流の活性化 (5) 産学官連携の観点からの大学改革−などについての具体的な考え方を示している。総合科技会議の産学官連携プロジェクトでは今後も引き続き中間まとめの内容を検討し、年度内を目標に最終的なとりまとめとしたい考え。

大学・研究の現場で生まれた技術開発の芽を産業に結び付けることを促進させるシステム整備の重要性は原子力分野についてもあてはまることで、転換期を迎え、新しい推進力を必要とする原子力産業の将来にとっても産学官連携機運の高まりは歓迎すべき動きと言えそうだ。


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