[原子力産業新聞] 2001年11月29日 第2114号 <3面>

[欧州議会] 原子力含むエネ政策案を承認

CO2 対策に重点、核融合の採来性にも期待

欧州議会は15日、欧州委員会 (EC) が昨年11月にまとめた欧州連合 (EU) 域内におけるエネルギー供給保障に関するグリーン・ペーパーを承認し、EUのすべての研究機関には原子力を含めて温室効果ガスを出さない電源へのシフトを勧告した。

EUがエネルギー政策の見直しを行うのは90年代半ば以来のことで、その最終的な戦略決定の原案であるグリーン・ぺーパーの中でECは原子力が域内の電力供給では最大シェアの35%を担っている事実を指摘。バランスの取れたエネ供給政策を実現する一方法として再生可能エネと同様にエネルギー・ミックスの選択肢として残す必要があると明言していた。8月には欧州議会の産業・貿易・研究・エネルギー委員会が同原案を審議し、G.チチェスター委員は原子力問題への現実的な対応を促す最終報告書案を欧州議会に提出していた。

欧州議会は議論のたたき台としては同案が需要サイドのシナリオに欠けるなどの不備を指摘しながらもエネ源や供給元の多様化戦略としては最適だとして同案の分析を歓迎。2010年までに CO2 排出量を8%削減するという京都議定書の目標値達成については原子力や再生可能エネの開発が重要だとするグリーン・ペーパーの指摘に同意した。これらの開発を妨げている既存の規制を排除したり、全EU域内でエネルギー税や消費税、環境税を免除する特例措置を取ったり、電熱併給の効率的なエネ生産設備の開発へのシフトを奨励するなど、C02 排出ゼロの電源に移行していくようすべてのEU機関に呼びかけている。

欧州議会はまた、雇用や社会保障がエネ生産に及ぼす効果についても供給保障上の重要性を認識している。再生可能エネや原子力の新規設備やクリーン石炭技術、電熱併給設備、省エネ技術や知的エネ消費 (ICT) などへの投資による機器・システムの販売、潜在的な雇用の拡大はEU域内だけでなく世界のより広い地域においても重要との見解を示した。

欧州議会はさらに、一層安全でコスト安、燃料効率のよい新型原子炉設計の研究に特別な重点を置くべきだと勧告。その理由として、原子力発電の将来がどのようなものであっても、温室効果ガスを出さないエネ源の多様化能力を十分維持するためだと説明している。核融合についても将来の CO2 を出さない世界規模の大型エネ源としての重要性を認めており、欧州の核融合研究者が開発競争に先んじることや、ITER を欧州に立地させることが重要だと指摘した。

エネ供給を保障するとともに京都議定書における CO2 排出削減目標値を達成する具体的な方策としては、2010年までに総発電電力量の22.1%を再生可能エネで生産するほか、原子力による発電量は現状レベルで維持、クリーン石炭発電所を増設すること、などを挙げている。


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