[原子力産業新聞] 2002年1月7日 第2118号 <12面>

[アジア地域協力] 第2回FNCAのハイライト

FNCA コーディネータ
原子力委員会参与 町 末男
実質的成果に期待大

尾身大臣と藤家原子力委員長冒頭挨拶

2001年11月29日、FNCA 大臣級会合はインドネシア、韓国、マレーシア、の科学技術担当大臣、中国国家原子能機構主任、タイ原子力庁長官、フィリピン科学技術次官、ベトナム科学技術環境副大臣、オーストラリア原子力科学技術機構政府公益部長、日本原子力委員長が東京に集まり、アジア地域における原子力技術の利用の重要性とその促進のための技術・研究分野での協力の必要性を熱心に議論した。

尾身幸次科学技術政策担当大臣は会議の冒頭、「安定的エネルギー源として、また、地球との共生のため、原子力の平和利用を推進することが世界にとって重要なアジェンダである」と述べた。続いて藤家洋一原子力委員長は「アジア諸国が協力して、人類の幸福のために農業、食糧、医療、エネルギーの分野で原子力利用を進めることが望ましく、そのためにFNCAの果たす役割は大きい」ことを強調した。

会議の中では終始、FNCA を主導している日本政府に対する各国の高い評価と今後の成果への期待の高まりが感じられた。

【大臣級代表の円卓討議】

大臣級代表による円卓討議が2つの議題「原子力エネルギーと持続的発展」と「放射線利用におけるアジア協力」について活発に行われた。

この中で、持続的発展とエネルギー戦略において、原子力エネルギーの果たす役割は極めて重要であることで意見が一致した。ただし安全の確保、核不拡散、一般国民の受容性が前提である。韓国、中国、日本などからは、原子力エネルギーをクリーン開発メカニズム (CDM) の1つとして認めるべきであるとの意見が出された。今後、持続的発展の中での原子力の役割やエネルギー戦略を FNCA の下で協力して研究していくことを韓国、中国、インドネシアなどが提案している。

一方、すべての参加国が関心を持つ放射線利用の議論では、農業/食糧、医療、工業、環境保護での活用を通して人類の福祉に貢献できるとして、その重要性が強調された。とくに FNCA 下の協力が一層強化されるべきであること、その際、IAEA/RCA、二国間協力との連携を強め効果的に成果を出していくべきであることが認識された。

【3プロジェクトが新たに承認】

ベトナム、日本から提案された3プロジェクト、「電子加速器の利用技術開発」、「テクネシウム-99mジェネレーターの製造技術の確立と普及」および「バイオ肥料の製造と利用」が上級行政官会合を経て、大臣級会合に提出され、受け入れられた。2002年から本格的に実施される。

【実質的成果が求められる FNCA】

今回の第2回 FNCA 大臣級及び上級行政官会合で伝わってきたのは、フィリピン代表の演説「貧困の撲滅と原子力」に象徴されるように各国で、国民の生活に直接つながった原子力利用の拡大の重要性が強く認識されつつあること、そのために FNCA で代表されるアジア地域協力の有用性が一層浮かび上がってきたことである。

FNCA への期待が高まってきた理由としては、昨年の第1回会合以降、医療、農業、研究炉、安全文化、廃棄物管理、人材養成、広報などのプロジェクトで、具体的な目的を明確にした協力活動が活発に動き出したことがある。パートナーシップの精神は各国から新プロジェクト提案が出ていることからも明らかである。これからの課題は数年間のうちに具体的な目に見える成果を生み出していくことである。そのためには、プロジェクトの効果的促進は勿論だが、日本政府の協力のさらなる拡大と、広い視野に立った協力政策の実施、各国におけるエンドユーザーとのより緊密な連携が強く求められる。

演説や討論、ロビーでの話などから各国の原子力の現状や政策をごく短く紹介すると以下のようになる。

【中国−2005年原発を総発電量の2.5%に】

12億の国民を抱える中国は今後増えつづけるエネルギー需要をどうまかなうのか、大きな課題である。国産エネルギー資源の石炭が中心であり続けるが、石炭産出地域から離れ、人口も産業も多い、東沿岸部では原子力の果たす役割が大きい。張華祝国家原子能機構主任は「2005年までに全発電量の2.5%を原子力で占めるようになる」と言っている。

【インドネシア−持続的開発に必要な原子力を強調】

インドネシアのハッタ大臣は、苦しい経済状況の中で政府は国民の生活の緊急なニーズに応えることに重点を置いていること、原子力利用では「主食となる農作物の品種改良」、「人材養成」、「エネルギー」などが重要課題であると述べた。年10%で増加するエネルギー需要を満たすため、原発は一定の役割を果たすべきであるとした。さらに FNCA で「エネルギー戦略と環境問題」を検討し、原子力の位置付けを明らかにする協力を進めるべきだと強調した。

【韓国−放射線利用研究センターの設置】

韓国の新しい科技大臣金榮煥氏は、エネルギー戦略の中で原発の占める重要性を強調し、FNCA がエネルギー分野でも協力プロジェクトを進めるべきだと述べた。また韓国は RCA の韓国事務局を来年から設置すること、IAEA の下に国際原子力大学を設置するよう提案しているなど、国際協力分野で積極的な活動を展開している、とその意気込みを披瀝した。また、新たに「放射線利用研究センター」を韓国原研の一部として大田の南数十キロに設置することを明らかにした。

【マレーシア−電子線による火力発電排ガス浄化技術開発開始】

マレーシアからはロウ科学・技術大臣が出席。原発計画はないが、放射線利用技術の開発が進展していると、「医学用サイクロトロン設置」、「ガンマーグリーンハウスの新設」などを紹介、環境分野では日本が開発した「電子線利用による火力発電排ガスの浄化」の利用開発研究に着手したと述べた。

【フィリピン−貧困撲滅に原子力を】

フィリピン科技省次官のパンラスィギ博士は代表演説で「貧困の撲滅に原子力技術を」と訴えた。フィリピンには貧困層が40%も居り、しかも増えつつある。その撲滅に少しでも原子力技術を役立てたいというのである。ミンダナオの農業を助けるため、「品種改良」技術を活用。アイソトープ水理学を利用しての地下水資源の有効利用を図る。ギマラス島で小規模ながら成功している不妊虫放飼法によるウリミバエの制御、撲滅をさらに大きく進めたい。それによってマンゴなどの輸出が可能となり農民が潤う。

【タイ−10MWt 研究炉の建設進める】

タイからはクリアンコーン原子力庁長官が出席。タイ原子力庁 (OAEP) の最重要な事業は10MW 新研究炉の建設であると述べた。炉本体はGEだが、廃棄物の処理・処分施設は日立が受注している。タイでは原発のコストが化石燃料に比べて1.3程度高く、国の経済見通しが得られる1〜2年後まで原発に関する結論を延ばしている。また国民の受容性、放射性廃棄物の処理・処分政策を明確にする。来年から組織改変によって原子力政策と安全規制を担当する「原子力庁」と、研究開発とサービスを実施する「タイ原子力研究所」に分離することを明らかにした。

【ベトナム−「原発の国家運営委員会」設置】

ベトナムの科学技術環境副大臣ホァン・ヴァン・フェイ氏は2020年までを視野に入れた電力開発計画の中で2015年頃に120万から400万kWの原発の導入を考えている。政府は国会と共産党の指導部に対し、原発導入に関する総合的な検討結果を2003年に報告し、決断を仰ぐ。このため、首相は「原子力発電に関する国家運営委員会」を設置して検討を進める。FNCA 各国の協力を期待すると述べている。

FNCA に関しては、ベトナムは大きな利益をうけている。とくに関心の高い活動分野としては、「原発に関する人材養成、安全、規制」、「使用済線源の管理」、「電子ビームによる放射線利用」、「原子力分析技術による海洋と空気の汚染の検知」であると述べている。ベトナムは現在、科学技術の改革の真っ只中にあり、近代化に役立つ研究を進展させるのが国の基本政策であると述べた。


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