[原子力産業新聞] 2002年1月7日 第2118号 <4面>

[年頭所感] 文部科学大臣 遠山敦子

ITERに積極的取組み

平成14年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

昨年4月に小泉内閣が発足し、以来、政府として、様々な分野にわたり「聖域なき構造改革」を進めております。内閣の一員として、私は、我が国が本当の意味で登かな国として発展し、世界の平和と繁栄に貢献していくためには、国家100年の計に立ち、「人材・教育・文化大国」と「科学技術創造立国」を目指す必要があると考え、そのための諸改革に全力を傾注してまいりました。文部科学省が発足してちょうど1年になりますが、本年も教育、科学技術・学術、文化、スポーツの振興を「未来への先行投資」と位置付け、施策の一層の充実を図り、国民の大きな期待に応えてまいる所存です。

(科学技術創造立国の実現)

科学技術は、日本経済の成長と構造改革を支え、希望ある未来を切り拓く原動力です。「知の世紀」といわれる21世紀において、高い科学技術水準は国力の枢要な源泉であり、我が国の将来の盛衰を決する鍵となるものでもあります。

このような認識のもと、文部科学省としては、国の科学技術関係予算の6割強を所管し、政府における研究開発の中核を担う立場にあることを踏まえつつ、「科学技術創造立国」の実現に向け、精力的に取り組んでまいります。

(「科学技術基本計画」を踏まえた科学技術・学術の振興)

昨年の3月には、21世紀の科学技術のあり方を指し示した5か年計画である第2期「科学技術基本計画」が閣議決定されました。本基本計画の柱は、基礎研究の推進や国家的・社会的課題に対応した研究開発への優先的資源配分などの科学技術の戦略的重点化と、優れた成果の創出・活用のための科学技術システムの改革です。

文部科学省としては、この第2期「科学技術基本計画」の方針を踏まえながら、科学技術および学術の振興のため積極的な施策の展開を図ってきているところであり、今後とも創造性に富んだ世界最高水準の成果を生み出すための研究と開発を総合的に推進してまいります。

(多様な基礎研究と重点分野の研究開発の推進)

昨年は、名古屋大学の野依教授がノーベル化学賞を受賞されました。一昨年に引き続き2年連続で日本人がノーベル賞を受賞し、我が国の基礎研究が世界から高く評価されたことは、大変喜ばしいことであります。

研究者の自由な発想に基づく基礎研究は、あらゆる分野の基盤となる重要なものであり、その成果は、新たな知を切り拓くとともに、国家・社会発展の基礎となるものであります。文部科学省としては、基礎研究を支える研究費の充実を図りつつ、大学共同利用機関等を中心とした天文学研究、加速器科学等の国際水準の先端的・独創的研究を番実に推進してまいります。

(国の存立基盤となる研究開発の推進)

安心・安全で、質の高い国民生活を実現していくためには、国の存立にとって基盤的であり、国として取り組むことが不可欠な領域を重視して、研究開発を推進することが重要であり、文部科学省においては、これらの研究開発を積極的に推進してまいります。

原子力については、大強度陽電子加速器等の大型加速器の先端的な研究開発を引き続き積極的に推進してまいります。また、高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめとした高速増殖炉サイクル技術の研究開発についても、安全の確保を大前提にして、地元住民をはじめとする国民の皆様の理解と協力を得つつ進めてまいります。国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画については、核融合エネルギーの実現に向けた重要なステップであり、密接な国際連携のもと、引き続き積極的に取り組んでまいります。


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