[原子力産業新聞] 2002年1月7日 第2118号 <4面>

[年頭所感] 経済産業大臣 平沼赳夫

安全前提に原子力発電を推進

平成14年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

(経済産業省発足1周年を迎えて)

経済産業省が昨年1月6日に発足してから1年が経ちました。昨年は、我が国の経済が長期にわたって低迷し、社会の閉塞感が拭えない中で、経済を立て直し、自信と誇りに満ちた経済社会を実現するための挑戦を続けた1年間でありました。

戦後の発展を支えてきた我が国の経済社会システムが昨今の大きな環境変化に必ずしも十分に対応できなくなっている中、経済の基本的な成長力を高めるための構造改革を推進し、新たな発展の芽を育て、経済を活性化していくことが、経済産業省に課せられた大きな使命であります。新年の始めに当たり、今後の経済産業行政についての私の所感の一端を申し述べ、年始のご挨拶とさせていただきます。

(国際競争力の強化)

世界経済のボーダレス化が進む中、製造業を中心に我が国産業の国内生産拠点を中国などへ移転する動きが加速しており、産業の空洞化に対する懸念が高まっています。

今後、我が国が世界のトップランナーとしての実力を保ち、国内雇用や地球経済の活力を維持・拡大し続けるためには、我が国産業の競争力の回復・向上が必須であります。こうした観点から、経済産業省では、昨年11月より開催しております「産業競争力戦略会議」などを活用し、高コスト構造の是正、産業技術力の強化、知的財産権の保護等を含め産業競争力の強化のための総合戦略を構築してまいります。

(イノベーションシステムの改革・知的財産権の保護強化)

我が国の産業競争力を向上させるためには、技術革新などのイノベーションが新たな需要を生み、その需要の拡大がさらに新たなイノベーションを研発するといった経済システムを構築することが重要であります。

このため、産業界の実用化段階にある研究開発を重点的に支援するとともに、大学で創出された研究成果を有効に事業化するため、3年間で1000社の大学発ベンチャー企業を創出することと、大学の特許実施件数を5年間で10倍にすることを目指し、全力を挙げてまいります。さらに、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野の研究開発投資を重点的に進めるなど、イノベーションシステムの改革を強力に推進してまいります。

また、ネットワーク上を流通するプログラムなどに関連した知的財産権の保護強化や弁理士の機能強化を図るため、特許法`商標法や弁理士法の改正の準備を進めてまいります。

(環境・エネルギー問題への対応)

昨年11月の COP7 会合において、京都議定書の運用ルールが最終合意に至りました。地球温暖化問題は、エネルギーの消費によって発生する二酸化炭素が主な原因であることから、経済活動に直接の影響を及ぼす問題であります。したがって、対策を講じるに当たっては、経済界の創意工夫を活かし、環境と経済の両立に資するような国内制度を構築していかなければなりません。経済産業省は、「環境保全や効率化の要請に対応しつつ、安定的なエネルギー供給を実現する」という観点から、省エネルギー対策や新エネルギー対策などを法的措置を含めて抜本的に拡充するとともに、安全の確保に万全を期すことを前提に原子力発電の利用の促進を図ってまいります。また、代替フロンガスなどの対策にも取り組んでまいります。

また、民間のリサイクル産業を育成するため、エコタウン事業や技術開発を積極的に推進するとともに、自動車リサイクルに関する法制度の構築を図るなど資源有効利用の促進にも努めてまいります。


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