[原子力産業新聞] 2002年1月10日 第2119号 <1面>

[原子力予算案] 2002年度原子力予算案まとまる

教育支援事業など新規に

昨年末に閣議決定された2002年度政府予算原案のうち原子力関係予算の詳細がまとまり、このほど原子力委員会に報告された。文部科学省関連は総額で3217.5億円となり、前年度予算額より7.5%減少したが、原子力・エネルギー教育関連の新規施策に関する予算が盛り込まれるなどの特徴が見られた。一方、経済産業省は、前年度に比べ4.5%増額の1676.7億円の提示で、関係審議会の報告を踏まえ重点対策の強化が反映された形の予算案となった。(4、5面に、文部科学省、経済産業省の原子力予算案表を掲載)


文部科学省原子力予算の総額3217.5億円のうち、一般会計分は1355.9億円 (対前年度予算比17%減) で、電源開発促進対策特別会計は1537.9億円 (同1.8%増) となった。電源特会のうち電源立地勘定は389.2億円 (同0.6%増) 、電源多様化勘定は1148.7億円 (同2.2%増) が示された。また、国立学校特別会計としては323.6億円 (同3.3%減) が計上された。

これを政策別に見ると、原子力の安全確保対策等に対して423億円。原子力への理解増進と立地地域との共生には261.7億円が計上され、新規に推進すべき施策として原子力・エネルギーに関する教育支援事業に対する4.8億円が含まれている。核燃料サイクルの研究開発では1091.9億円。先端的な原子力科学技術の推進には1270.5億円が充てられ、このうち大強度陽子加速器計画は前年度より61億円増の108.7億円となった。

機関別では、日本原子力研究所は907億円 (同12.2%減) となっている。安全性研究に57.6億円、原子力防災対策に5.3億円、大強度陽子加速器計画を含む中性子科学研究に81.5億円、大型放射光施設関連研究に46億円、高温工学試験研究に23.5億円 −などが計上されている。核融合研究開発には51.2億円が充てられたが、前年度予算の46.2%と大幅に減少した。

核燃料サイクル開発機構は、一般会計164.5億円、電源特会多様化勘定1027.7億円の合計1192.2億円の金額 (同11.7%減) が示された。FBR サイクル技術の研究開発には、一般会計から57.5億円が、また電源特会から252.5億円が充てられた。原型炉「もんじゅ」の維持管理経費として82.9億円が含まれ、安全対策のための設備工事に19.3億円が計上されている。また、燃料サイクルシステムや革新型炉に関わる公募型技術開発に対して、18.6億円と35.1億円がそれぞれ新規計上された。

独立行政法人放射線医学総合研究所に対しては、今年度より6.4億円減の総額141.8億円が示された一方、理化学研究所の原子力関係予算額は11.9億円減の73.1億円だった。


経済産業省がまとめた原子力関係予算案は、電源立地対策強化等を含め、1677億円 (前年度1604億円) の総額となった。昨年まとめられた総合資源エネルギー調査会原子力部会や原子力安全・保安部会等の報告に沿って安全面、政策面の二本柱で、それぞれ重点対策強化にむけた政策パッケージが盛り込まれた。立地推進策や広報対策の抜本的強化のほか、安全規制の実効性の向上、防災対策を引き続き強力に実施する方針。高レベル廃棄物処分に関しても実施主体による処分地選定が具体的な段階に入ることが見込まれることから、立地対策の一環として同処分施設の立地が見込まれる地点に対する初期対策交付金26億円を新設する方針だ。

政策別にみると、原子力安全関係には283億円 (前年度293億円) を計上した。うち原子力発電関係に122億円が充てられ、そのなかで高経年化対策に48億円、耐震信頼性実証等に25億円、また高燃焼度軽水炉燃料等の事故時の挙動に関する技術調査を開始するため4億円を新規に計上した。

核燃料サイクル関係には45億円 (同39億円) を計上、「うち使用済み燃料の中間貯蔵対策に20億円、放射性廃棄物処分対策に10億円を投ずる。また原子力安全全般に共通の調査研究に2億円を計上し、人文・社会科学も含めた広範な分野の調査研究を創設、この関連として提案公募型による原子力安全基盤研究に関する調査研究に約2億円を新規計上した。

また原子力政策関係には246億円 (同250億円) を計上。そのなかで原子力に対する国民合意形成については、7億円増の71億円をあてて、エネルギー教育充実や原子力発電所への見学者受け入れ等の対策を進める。新技術開発については、原子力政策上の重要課題として、提案公募型の革新的実用原子力技術開発制度を本格化させるため24億円をあてたほか、廃止措置関連の技術開発も16億円 (同13億円) を計上している。

放射性廃棄物の処分技術の開発等には135億円を投入、高レベル廃棄物処分技術の開発などに取り組む。核燃料サイクル関係には17億円を確保し遠心法ウラン濃縮技術の高度化等に取り組む方針で、遠心法ウラン濃縮事業の推進にむけた補助金13億円を新規に計上した。そのほか、革新的実用原子力技術開発が原子力分野の研究人材育成にも貢献するとの観点から提案公募方式による安全性・経済性に資する原子力研究開発支援に24億円をあてる。原子力立地に関しても、83億円増の1159億円を確保して個々の立地地域の実情・ニーズにきめこまかく対応した施策を講じる考えだ。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.