[原子力産業新聞] 2002年1月24日 第2121号 <2面>

[原子力安全委員会] 防災部会、ヨウ素剤配布で審議

原子力安全委員会の原子力施設等防災専門部会 (部会長・片山恒雄防災科学技術研究所理事長) が23日開かれ、原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方などについて審議が行われた。

同専門部会では昨年6月に緊急被ばく医療の基本的な考え方やその体制について「緊急被ばく医療のあり方について」として取りまとめ、その要点を防災指針に反映した。

その際、安定ヨウ素剤の予防的な服用に関しては今後の検討課題としていたもの。事故発生時に原子力発電所等からの放射性ヨウ素の放出に対する安定ヨウ素剤の予防的な服用については、吸入による放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制する効果が認められており、安定ヨウ素剤の服用を実際の防護対策として、より実効性ある形として位置付けること、その具体的な方法等についての考え方を示すため、同部会の分科会で検討が進められてきている。

これまでに、 (1) 安定ヨウ素剤の効果および副作用 (2) 被ばく時年齢と甲状腺がんとの関係 (3) 安定ヨウ素剤に係る防護対策を開始するための線量 (4) 安定ヨウ素剤の服用対象および服用方法 −等について医学的見地から検討がなされている。こうした検討について、この日の部会では、甲状腺の内部被ばくに対する安定ヨウ素剤の予防的服用を防護対策のひとつに位置付ける考え方と、より実効性のある安定ヨウ素剤に係る防護対策の具体的な考え方が報告された。

そのなかで、安定ヨウ素剤の予防的服用に係る防護対策の指標については、すべての年齢の対象者に対して包括的に、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量である100ミリシーベルトを防護対策開始の目安として提案した。また配布の方法も具体的に示され、配布対象に関しては、胎児を否めて若年者への影響を踏まえ、若年者と妊婦への配布を優先させる等の考え方が示された。副作用に対する配慮も具体的な疾患を明示し、パンフレット等をヨウ素剤配布時に同時に配布するなどの対応を示した。服用対象の年齢に関しては、18歳未満では放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの発生確率が成人に比べ有意な増加がみとめられること、40歳以上では、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんのリスクがないことなどをあげて安定ヨウ素剤の服用は40歳未満の物を対象にすることが具体的に提案された。そのうえで結核を有する者、新生児、妊婦、授乳婦についてそれぞれ安定ヨウ素剤服用についての留意点が具体的にわかりやすく記述されている。

このほか、服用の回数やその量、従事者の予防服用、予防服用に関する日頃からの理解を得るための対応についても具体的提案がなされた。

この日の部会では、各委員からの意見をふまえ、防災指針への反映について、さらに検討を進めることとした。


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