[原子力産業新聞] 2002年1月24日 第2121号 <4面>

[新刊] 新しい原子力文明へ −原子力の技術的安定と社会的安心への道筋−

原子力学会・特別専門委 編著

原子力に携る技術者の安全への努力と、原子力に対して社会が持っている安心感との間にはかなりのギャップがある。すなわち、社会とのかかわりから原子力を考えると、技術面だけでなく、政治、経済、教育、倫理などの広範囲な社会科学的な課題を含んでいる。

この観点から、原子力の技術的な安全の基本概念とその実践を紹介したうえで、技術的な安全と社会の安心感とのギャップの構造を考察した本が出版された。

本書では、まず原子力の持つ特性や原子力の役割を再認識する米国の動きを紹介するとともに、発電炉の開発の歴史をやさしく記述している。次いで、原子力安全の基本哲学を述べ、「止める・冷やす・閉じ込める」を確実なものとするための研究開発がどう進められ、実証されて原子力発電所に組み込まれているか専門的ながら分かり易く示している。

さらに、安全規制の概要を紹介し、また原子力発電所の安全確保の考え方を、設計・製作・運転段階でどう具体化しているかを実例で説明。最後に、技術的な安全と社会的な安心とのギャップについての社会調査結果を紹介し、今後の教育や広報のあり方を提案している。

この本は、実際に原子力発電の実務に携わり、日頃、原子力の安全確保に努力を傾けている原子力技術者からの社会へのメッセージでもある。原子力関係者だけでなく、広くエネルギー問題に関心のある方にも参考となる好著だ。

ERC出版発行、A5版、210頁、定価1800円 (税別)


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