[原子力産業新聞] 2002年1月31日 第2122号 <2面>

[東芝] L1廃棄物の減容技術を開発

東芝は超臨界水を用いた廃棄物処理システムの開発を進め、低レベル放射性廃棄物の内、原子力発電所の原子炉水等の浄化によって発生する高べータガンマ廃棄物(L1廃棄物)の減容について、処分量を従来法で処理した場合の20分の1に、また処分コストでは10分の1に抑えることが可能との技術見通しを得た。現在処理システムの実規模試験を進めており、高べータガンマ廃棄物の処分が実際に開始されると見込まれる2011年頃に向けて実用化をめざしている。

原予力発電所では、プラントの運転で生じる放射性の不純物等についてフィルタ(ろ過装置)等を使って浄化している。たとえばBWR型の軽水炉では、タービン系や給復水系等からの不純物をイオン交換樹脂を使用した各種ろ過装置や脱塩装置で除去することで水質等の保全を行っており、日々の安全で安定した運転を支える重要な役割を果たしている。一般に110万キロワットクラスのBWR一基では、この内原子炉水や燃料貯蔵プール水等の浄化により、安全評価ベースで年間25立方メートル程度の使用済みの廃樹脂(高べータガンマ廃棄物)が発生するので、発電所内に専用の貯蔵タンクを設けて安全に貯蔵する設計とされている。

現任、こうした高ベータガンマ廃棄物の処分については、国が関連基準の検討を進めており、適切な処理後に処分できるかどうかの可能性に関して日本原燃が予備調査を行っているところ。

そこで東芝では、今後見込まれる高ベータガンマ廃棄物処分にむけ、その処分量を減らした上に処分コストも低減できる減容処理システムの開発を進めてきた。高温・高圧下で特殊な性質を帯びる超臨界水に着目したところが大きな特長。

起臨界水中では、常温では分解することが難しい廃樹脂のような有機物を短時間に完全に分解できるという特性をいかしたシステムとなっている。

処理は基本的に、450度C、30メガパスカルという超臨界水中で廃樹脂を完全に無機物に分解し、次に放射性物質を沈殿分離させるという2つのプロセスからなる。

処理装置は耐圧性と耐食性を考慮してステンレスとチタンの二重管構造とし、シンプルな一体型二段反応器モジュールを考案した。現在実規模の試験装置を川崎にある東芝電カシステム社の電力・産業システム技術開発センター内に設置し、性能試験を実施中。

これまでに1時間に1キログラムの廃樹脂を処理できる技術的な見通しが得られている。

このシステムでは、処理がすべて水中でできるので、放射性物質や化学的有害物質を極力環境に放出しないことや、連続処理が可能なこと、さらに装置がコンパンクト化できることが強み。また処理装置を標準モジュール化して各発電所の状況にあわせて柔軟に設置できるよう工夫している。

現在のところ高べータガンマ廃棄物の処分については、セメントで固化して直接処分する方法などが考えられているが、比較的放射性レベルの高いL1という分類にあたり、それ以下の放射能レベルの廃棄物よりも処分費用がかさむため、減容してL1レべルの廃棄物処分量を減らすことができれば処分の負担軽減とコスト効果が大きいとの期待がある。

東芝でこうした観点から、今後の処分開始への動きもみながら処理システムの実規模試験等を進めて、処分が具体化すると見込まれる2011年頃の処理設備の運転開始に向けて、今後2〜3年以内の実用化をめざす。

なお、同技術は、BWR型軽水炉だけでなく、PWR型軽水炉や今後運転を開始する再処理施設といった燃料サイクル施設等への適用も可能という。

また東芝では国内だけでなく、グローバルな展開も視野に入れて実用化をはかっていく方針だ。


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