[原子力産業新聞] 2002年2月7日 第2123号 <1面>

[千人研修] 旧東側諸国安全研修 受入れ目標千人を達成

1986年のチェルノブイリ事故をきっかけとして国際的に関心が高まった旧ソ連・東欧地域の原子力発電の安全性向上を支援するため、1992年以来わが国が進めてきた「原子力発電所運転管理等国際研修事業」、いわゆる「千人研修」の今年度の研修受入れが今月1日終了し、10年間にわたる同事業が完了した。通算での研修受入れ人数は当初の目標を超える1412名。研修をとおして各国の原子力安全性改善に多くの成果を生んだ。

「千人研修」事業の締めくくりにあたり、受入れ窓口機関の海外電力調査会は同日、東京都港区のホテルで同事業の成果報告会を開催した。

冒頭同事業を委託した経済産業省から佐々木宜彦原子力安全・保安院長が来賓として「国と電気事業者、メーカーが一体となり行われた受入れ事業の結果、広範な成果が挙げられたと認識している。研修参加者が我が国の安全管理面での優れた点に関する知識や情報を広め、一層の原子力安全の向上に役立ててほしい」と挨拶した。

海電調の近藤俊幸会長は関係機関の研修事業に対する協力を感謝したうえで「研修成果が参加国の安全向上に貢献していると聞いて光栄だ」とするとともに、研修参加者のネットワークが今後も維持されることに期待を寄せた。

「千人研修」は、91年のロンドンサミットでわが国がその実施を提唱。旧ソ連・東欧9か国と中国を対象に、安全文化の醸成や安全管理体制や技術面にわが国の経験を活用してもらおうと始められた。研修により、「安全文化や安全管理レベルの向上などソフト面」での成果が見られていることが報告され、品質管理部門の設置時にわが国の事例を参考したこと、安全管理チェックリストの導入や予防保全長期計画の作成−など、具体例が挙げられた。さらに、保守訓練センターの設計や運営面でわが国のこうしたセンターを参考にしているケースが多くあるという。

ほかに、現場から安全改善提案の増加や安全PR活動強化で改善が見られたほか、わが国を参考に、具体的な設備機器の改善や耐震評価基準の見直しなども行われている。海電調では、こうした研修参加国で改善事例が見られた背景には、「各組織幹部の原子力安全の重要性に対する認識が深まったからこそ」だとの評価を与えている。

今回の成果を踏まえ、保安院では来年度から新たに、中国やベトナムなどアジアを重点対象とした安全向上支援を実施していく計画だ。


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