[原子力産業新聞] 2002年2月14日 第2124号 <1面>

[原子力安全・保安部会] 合理的な検査制度へ検討開始

総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会は、原子力関連施設を対象に行われている検査制度を抜本的に見直すことも視野にいれた検討作業に乗り出した。同部会のもと、12日に「検査の在り方に関する検討会」(委員長・班目春樹東大院教授)の初会合が開かれ、審議を開始。合理的な規制の考え方を基本として、原子力の安全確保に求められる検査制度が抱える課題について、今年半ばをめどに論点整理を進める方針だ。

同検討会は、昨年7月の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会報告書の答申に基づき、安全規制制度の今後の方向性を定めるために設置されたもの。会合の冒頭、佐々木宜彦原子力安全・保安院長は「安全確保のシステム全体における国の責任の明確化が求められている。科学的、技術的に合理性を追求する中で検査の課題整理をしていくことが重要だ」と述べ、検討会での審議に期待を表した。

続いて保安院から原子力施設検査制度の現状と検討にあたって視点・課題を説明。その中で、原子力の安全規制には、社会全体との関わり方や透明性確保、科学的合理性、国や事業者の資源を踏まえた実効性−などの観点が必要との認識に立ち、検討すべき課題の素案が示された。

原子力の安全確保システム全体における検査の意義などに関する点では、原子力固有のリスクを踏まえたうえで、国の検査や第三者検査、事業者の自主検査などの責任分担や位置づけの必要性のほか、安全文化の向上にむけたシステムのあり方、品質保証の観点から施設検査にあたりプロダクトの技術基準の適合性に加えてそのプロセスに対する確認を組み込む必要性−などが指摘された。

国が行う検査は現在、原子力施設の系統や設備ごとの安全上の重要度に基づいて対象や方法が決められているが、こうした点では、科学的なデータやトラブル要因分析の蓄積、検査技術の進歩を考慮した検査の必要性や、個々の安全実績をベースにした施設ごとの検査内容の適用、さらに技術基準の性能規定化や民間規格の採用などが検討すべき内容として挙げられている。

このほか、使用前検査、溶接検査、燃料体検査、定期検査、保安検査−などの現行の様々な検査制度が個別に抱える課題にも検討が加えられることになった。

原子力施設検査に対しては、「事業者の責任に基づく保安活動実施状況を国が確認する仕組みに移行することが望ましい」とする声が産業界にある中、今後検討会では、規制を行う側の行政責任や専門領域外の国民社会との関係など複雑な要素も配慮した安全規制と検査のあり方を精力的に検討していくことになる。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.