[原子力産業新聞] 2002年2月14日 第2124号 <2面>

[原研] 簡便な中性子測定法開発

日本原子力研究所は7日、人体とほぼ同じ放射線感度を持った二種類の線量計を組み合わせ、臨界事故発生時に受けるような高い中性子吸収線量を測定する簡便な手法を開発し、十分実用になることを臨界事故模擬実験で明らかにしたと発表した。

万一臨界事故か発生した場合、緊急被ばく医療などのために事故現場近くの作業者が受けた吸収線量の情報が必要になる。これまで海外の臨界事故模擬実験によって開発が進められた中性子吸収線量の測定方法(誘導放射能測定法)では、人体とは異なる金属などの放射化量を測定しているため、人体による吸収線量を評価するには複雑な解析計算と換算が必要であり、精度が悪く評価には多くの時間がかかっていた。

原研は、中性子とガンマ線の両方に感応するアラニン線量計とガンマ線のみに感応するホウ酸リチウム熱蛍光線量計の両者を組み合わせ、その測定値の差をとることによって、複雑な計算を行わずに中性子吸収線量を測定する手法を開発した。これらの線量計は、小型で人体と同様の放射線感度を持っているため、核燃料取扱施設の従事者が個人線量計として装着していれば、大量の放射線被ばくをした場合でも吸収線量を即時に把握することができる。過渡臨界実験装僚(TRACY)を用いた臨界事故模擬実験によると、この線量計では、中性子吸収線量を0.5から700Gy(グレイ)の範囲で測定でき、十分実用になることが明らかになったという。


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