[原子力産業新聞] 2002年2月21日 第2125号 <3面>

[米] ブッシュ大統領、ユッカ山勧告承認

米国のG.ブッシュ大統領は15日、米国エネルギー省(DOE)のS.エイブラハム長官が前日に提出した勧告文書を受け入れ、サイトとして使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物(HLW)を深地層に最終処分するサイトとしてネバダ州ユッカマウンテンを承認した。DOEは今後、ユッカマウンテンに最終処分場を建設するための認可を米国原子力規制委員会(NRC)に申請することになるが、同計画に反対するネバダ州が大統領決定に異議を申し立てたい場合は60日間の猶予が与えられている。もしそうなれば、議会は大統領決定を支持して異議を却下するか否かを90日間に渡って審議する予定で、この場合は上下両院における票決が必要となる。

大統領宛ての書簡の中でエイブラハムDOE長官は、「ユッカマウンテンにおける20余年、40億ドルを投じた科学調査の結果かう同地に米国初の高レベル放射性廃棄物の長期深地層処分場を建設することは科学的にも技術的にも適切であることが実証された」と指摘。広範囲に及んだ調査と、その調査結果を国際原子力機関(IAEA)を含む複数の外部機関が技術的に審査した結果は、健全な科学原則に基づく結論として、環境防護庁(EPA)およびNRCが採用した放射線防護基準に則して評価しても処分場が地元住民の健康や安全を損なうことはないと確信させるに至ったと説明した。

同長官はまた、大統領への勧告に際しては切実な国家利益を尊重したと強調。しかし、その他のいかなる配慮事項とも無関係に、ユッカマウンテンが大衆の健康と安全を守るのに必要な設計要素や天然バリア、ロケーションを備えていなかったら勧告などしないし、また、できもしないと訴えている。

なお、同地の科学技術的な適性のほかに同長官が配慮した事項としては、次のようなものが列記された。(1)国家安全保障=米国の主要軍艦の約4割が原子力を動力としており、定期的な使用済み燃料の処分は避けられない(2)核不拡散=冷戦構造終結後、不要になった核兵器の解体から出る兵器級プルトニウムの処分は重要(3)エネルギー供給保障=国産電力の約2割を賄う原子力の確保はどうしても必要。持続的な経済成長を可能にし、地球温暖化にも影響の少ない原子力という電源の維持と潜在的な拡大のために処分場は必要不可欠(4)国土の安全保障=現在、使用済み燃料その他のHLWおよび余剰プルは39州の131サイトに保管されており、1億6100万人がこれら保管所から75マイル以内に居住している。処分場無しでこれらの完全な処分は難しく、テロリストによる盗難を防ぐためにも深地層処分は好ましい(5)環境保全=軍事廃棄物として1億ガロンの液体HLW、2500トンの未処理の固体燃料が7州に保管されており、処分場での処分が必要−など。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.