[原子力産業新聞] 2002年2月21日 第2125号 <4面>

[ITER計画] EU専門家ら「最速の道筋」を論議

現在、国際熱核融合実験炉(ITER)計画は、日本と欧州連合(EU)、ロシア、カナダの4極の間で炉の建設・運転に向けた協定案作りやサイト選定などで政府間協議が定期的に行われている。

そうした中で、特にEUの動向は炉の建設サイト誘致も絡んで我が国としても目が離せないが、その欧州では、ITERも含めた核融合研究をめぐって「FastTrack」と呼ばれる核融合専門家の間で議論が行われ、一応の結論が咋年末にまとめられた。「FastTrack」とは「核融合発電の実用化を目指す最も速い道筋」といった意味合いだ。

欧州の核融合計画については、2000年にユーラトムの評価委員会が将来の研究開発の道筋を探る中で、ITERの建設決定から35年後に原型炉を稼働させ、実証炉に移行するとした3段階を経て50年後に実用的な発電に至るという青写真を示していたが、専門家らは今回、核融合発電実用化までの道のりをいかにして「30年程度に短縮する」かを議論。次のような助言としてまとめることになった。

−ITERは、現在の設計範囲内で可能な改造を行い、20から30年のうちに核融合発電の技術的可能性を検証するべきである。

−ITERの後続として、原型炉と実証炉段階の設計を進め高い信頼性の実証炉設計を行うべき。その場合、技術や経済性で最適化の追求を多少後回しにすることも止むを得ない。

−EUの核融合研究は、エネルギー生成・抽出を主目的とするITERでの研究開発に対して協調するとともに、将来炉の概念や設計にも取り組むことが重要。

−環境親和的で経済性の高い材料開発こそ核融合の成立性の重要な要因であるため、ITERとともに大強度中性子源の国際核融合材料照射施設(IFMIF)の開発が必要。IFMIFの工学設計活動を2006年までの第6次研究計画中に完了すべきである。

さらに、これら目標を実現させるためEUは、ITER計画の推進と並行してIFMIFの工学設計を開始することやITERの実現や財源確保を余地を大きくするために既存の核融合施設を段階的に廃止させることが重要−などと指摘。複数の研究活動を並行させるために必要な資源は、核融合開発のひとつの段階を省略することや国際協力の拡充により確保すべきとしたほか、核融合開発においては産業界や電力業界との連携強化も必要だとしている。

こうした「FastTrack」の見解は一部の研究者間で行われた議論の結果とはいえ、従来科学的研究の色彩が強かった欧州のITERに対する考え方が、実用的なエネルギー利用を目指した核融合開発という点を重視しつつある表れだとも考えられている。


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