[原子力産業新聞] 2002年2月28日 第2126号 <4面>

[産業技術総合研究所] ガンマ線使いCT技術

産業技術総合研究所(産総研)は25日、レーザー逆コンプトン散乱によって発生したエネルギー可変・高エネルギー・準単色γ線(レーザーコンプトンγ線)を用いた、原子炉部品や船舶、航空機などといった大型工業製品および工業設備の非破壊検査へ適用するためのγ線CT技術を、世界で初めて実用化に成功したと発表した。

放射性同位元素から放出される数百keV、数MeV程度のエネルギーの高いγ線や、小型電子線形加速器を用いて発生する制動x線などは比較的浸透力が高いことから、数センチメートル程度の厚さの金属やコンクリート等の内部欠陥を調べることが出来るため、エンジンや航空機部品等の大型工業製品の非破壊検査用X線源として利用されている。しかし、更に厚い物体の検査に適用するためには、線源の強度を非常に高くするか、X線やγ線のエネルギーを高くすることが必要となり、これには数々の安全上・技術上の問題が発生することから、高エネルギー単色X線による大型工業製品の高分解能非破壊検査は、これまで困難とされていた。

産総研では、(1)物体の透過力が強い(2)エネルギー可変(3)数〜10%程度とエネルギー幅も小さい(4)中性子を発生させずに高エネルギーγ線を発生することが出来る−という特長を持ったレーザーコンプトンγ線に注目。その高度利用技術研究開発を進めて来たが、このほど大型工業製品の非破壊検査への応用を目指してレーザーコンプトンγ線を用いたγ線CT技術の開発を行い、世界に先駆けてその実用化に成功した。

産総研では今回、同研の小型電子蓄積リング「TERAS」にγ線CT装置を設置し、エネルギー10MeVのレーザーコンプトンγ線を用いて三次元構造物のCT断層撮影および、数枚の断層像を基に、構造物内部の三次元可視化を行ったが、今後は同システムを用いて様々な工業製品の非破壊検査を行い、従来手法と比較してより高分解能な面像を取得出来るシステム作りを行うほか、実際の工業製品の非破壊検査へ同システムを適用し、原子力、船舶、航空、ロケットなどといった多くの産業分野の製品開発に、同技術を応用する予定という。


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