[原子力産業新聞] 2002年2月28日 第2126号 <4面>

[原子力文化振興財団] 今年度総括のフォーラム開く

日本原子力文化振興財団は15日、都内のホテルで「エネルギー、原子力、環境、この一年」のテーマでエネルギー問題フォーラム東京を開催した。

これは、同財団が今年度、全国各地で8回実施してきたエネルギー問題研究会のまとめとして、さらに議論を深めるため、代表的な4か所のコメンテーターに概要を紹介してもらうとともに、質疑や意見交換を通じ、フォーラム会場の参加者にエネルギーなどの現状を正しく認識してもらう目的で開かれたもの。会場には100名を超える参加者が集まった。

四国ブロック代表の九州大学の清水昭比古教授は、昨今の脱原子力、自然エネルギー志向の風潮に対し、「風力や太陽光はあまりにも分散し過ぎたエネルギーだ。例えば、太陽光を集めて100万キロワットの原子力発電所に相当するエネルギーを得るには、山手線内全部にパネルを張る必要があり、日本全体の原子力発電を太陽光で賄うには、四国の面積の4分の1に隈なくパネルを張り巡らす必要がある」と、安易な自然エネルギーへの過剰な期待は危険だと指摘した。

また、昨年9月に米国で起きた航空機テロについて述べた電力中央研究所名誉・研究顧問の神山弘章氏(名古屋ブロック代表)は、個人的意見としながらも、日本の原子力発電所への航空機テロを想定した場合、(1)世界貿易センタービルと原子炉建屋の断面積および構造の相違(2)サイトの地勢上、建築上の特性(3)耐震設計による炉心位置の深さ(4)実験データによる耐衝撃性−等を考慮すれば、十分に強度があり、心配には及ばないことを詳細に説明した。

近畿ブロック代表の大阪大学名誉教授の宮崎慶次氏は、「多重防護による安全確保の考え方」のテーマで発表。兵庫県南部地震級の地震が来ても、原子炉は地表の3分の1程度の揺れでしかなく、十分に耐え、原子炉そのものに大事故に拡大しない仕組みが備わっていることを具体例で示した。

その後、参加者との質疑応答、意見交換に移り、ある参加者は「原子力の風評被害を防止するためには具体的な方策は何か」と質問。コメンテーターから「風評被害の原因は科学とジャーナリズムの怠慢。正しい知識の普及に努めることが何よりも重要だ」とする意見が述べられた。このほか、原子力産業の空洞化、志気の低下、大学での原子力学科の名称変更、技能伝承の重要性等について討議が行われた。


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