[原子力産業新聞] 2002年3月14日 第2128号 <1面>

[安全目標専門部会] 定量的な安全目標検討へ

原子力安全委員会の安全目標専門部会(部会長・近藤駿介東大院教授)が11日開催され、今月中に安全委員会に報告する予定の安全目標に関する調査審議状況とりまとめ等に関する検討を行った。報告は今後の検討の進め方として、定性的な安全目標案の絞込みを今年5月から6月を目処に行うとともに、5月から定量的な安全目標策定にむけた検討を開始。1年を目処に定量的な安全目標の策定を行うとしている。また安全目標の策定プロセスの透明性をはかるとともに、幅広い層からの意見を得ながら審議を進めるため、ワークショップ(仮称)を複数回開催する方針も盛り込まれている。

原子力施設等の安全目標策定のために設置された同部会は昨年2月に初会合を開催以来、社会を取り巻くリスクや環境、航空、自動車などの各産業分野のリスク管理状況を調査し、安全目標の概念や安全目標を策定するにあたって考慮すべき事項等の検討を進めてきた。

今回安全委に報告する調査審議状況には、こうした内外における安全目標策定への取り組み状況やリスクに関する調査状況が示されている。

また部会意見を中間とりまとめの形にして安全自標の設定の意義、策定にあたって考慮すべき事項、安全目標の構造や定量的な安全目標が有する性格等についての考え方を盛り込んだ。そのなかで、安全目標を「安全確保活動の目指すべき目標、すなわち政府および事業者が災害を発生させないという使命に対し、どの程度の確かさをもってこれを実現しようとしているかを示すもの」とし、安全目標の設定の意義を(1)リスク管理業務に透明性、予見性、整合性を与え、規制行政活動の合理化、組織化を促進する(2)公衆や産業界や他の政府組織の間に規制当局の意思決定に対するより進んだ理解と信頼を確立し、産業界が自らリスク管理プログラムと研究努力を打ち出すことを支援することができる(3)公衆に対して、安全性向上ならびに「どれだけ安全であれば十分安全か」という観点から、行政に対して発言できる手段を提供できる(4)個人ならびに組織が公衆の安全確保のために努力する動機付けと挑戦の大きさを示すことができ、社会の成熟と効率向上に寄与できる可能性がある--としている。

また、安全目標の構造について、原子力の利用全般を対象とした確保すべき安全のレベルを概念として示す「定性的安全目標」と、それを具体的な数値により明確化した「定量的安全目標」からなる構造を基本とするとの考えを示している。

今後具体的に検討されることになる定量的な安全目標の性格づけについて報告は、厳守すべき「最低限度」と「努力目標」の二つを示すことが適当とする考え方と、一律に定最的なレベルとしては設定せずに施設の安全性の改善の方法論として例えば費用対効果等を考慮に入れた最適化の考え方を示すにとどめるという、二つの考え方があることを示している。

同専門部会では、実際の適用を視野にわが国に最適な定性的・定量的安全目標の具体像を今後つめて行くことになるが、その際、安全目標を有した場合の具体的な規制等への反映、あるいは国民理解を深めるうえでのリスクコミュニケーションのあり方等、安全目標の活用のあり方を視野に入れて検討を進める。


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