[原子力産業新聞] 2002年3月28日 第2130号 <4面>

[原研] 地層中で核種移行抑制を確認

日本原子力研究所は14日、中国の輻射防護研究院と共同で建設した地下の試験施設で長寿命放射性核種の移行挙動を追跡した結果、世界で初めて天然の地層がプルトニウムの移行を著しく抑制する効果があることを定量的に示すことに成功し、原研が開発した浅地中処分安全評価コードGSA-GCLの信頼性を検証したことを明らかにした。原研では、今回の成果がアルファ廃棄物浅地中処分の基準整備や処分の実現に向け大きく貢献すると期待される、としている。

我が国では低レベル放射性廃棄物について、固化処理などを施した後、放射能レベルの比較的低いものには地下数10メートル程度までの浅い地層に埋設して一定期間管理する浅地中処分を採用している。原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物については、既に日本原燃六ヶ所施設で埋設事業が行われているが、今後、核燃料サイクル施設などで発生するアルファ核種を含む廃棄物のうち核種濃度が低いものは同様の方式で処分することが考えられている。

浅地中処分の安全評価では、処分施設から放射性核種が漏出することを想定して住民の被ばく線量を評価するが、アルファ核種は被ばく線量への相対的寄与が大きいにもかかわらず、天然環境における実際の核種移行のデータが世界的にはとんどないことから、十分なデータの取得が必要とされていた。

原研はこれまで、中国核工業集団公司と中国輻射防護研究院と放射性廃棄物の浅地中処分に関する協力研究を実施。今年度でこの研究プロジェクトを完了した。プロジェクトでは、地表及び地下30メートルに試験施設を建設整備した後、アルファ核種など(プルトニウム238、ネプツニウム237、ストロンチウム90)について、地層中の移行挙動を約3年にわたって追跡した。

その結果、プルトニウムは、地下水速度の5000分の1、ネプツニウムは500分の1以下のゆっくりとした速度で動くことを確認した。また地層の持つ大きな移行抑止効果を世界で初めて定量的に示すことに成功した。

このほかプロジェクトでは、室内実験による核種の土壌への吸着係数の測定や、地下水の流速、流向などの水文学的データの取得も行ってきた。これらのデータを使って、原研で開発した浅地中処分安全評価コードGSAI-GCLの検証計算を実施するなかで、野外試験の結果を良く模擬した結果を得ることができ、同評価コードの信頼性を確認することができたという。


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