[原子力産業新聞] 2002年4月11日 第2132号 <4面>

[原研] 高経年化研究むけ装置を整備

日本原子力研究所は8日、軽水炉の高経年化対策の一環として行われる照射誘起応力腐食割れ(IASCC)の研究に用いる「高度材料環境照射装置」が十分な性能を備えていることを確認したと発表した。

沸騰水型軽水炉(BWR)の炉内構造物は、高いレベルの中性子やガンマ線による照射とともに、約290度Cに達する高温、約70気圧の高圧の環境にさらされている。このほかにも冷却材の流動による衝撃が加わるなど、過酷な条件が重なっている。こうした複合的な環境で炉内構造物の材料がどのような劣化の過程を見せるのかに研究対象としての関心が集まっている。特に、発電所機器に多く使われるステンレス鋼の損傷メカニズムが注目されている。

官民を挙げて実施されるIASCCの研究に原研も参画。JMTRを利用して二〇〇八年をめどに現象の発生・進展メカニズムを解明するほか、試験片の照射データベースの構築を通じて経済産業省の高経年化対策にも協力していく計画だ。そのため、原研では1998年度から約1億円を投じて、大洗研究所にある材料試験炉(JMTR)に、軽水炉の炉内の水質、温度などの環境と同じ条件でIASCC照射試験を行うための「高度材料環境照射装置」の整備を進め、今年2月に完成していた。

高度材料環境照射装置は、IASCC照射試験のための試験片を収納し炉内に装荷される「飽和温度キャプセル」と、炉外からキャプセルへ高温高圧水を給水するための「水環境制御装置」などで構成されるもの。水環境制御を行う装置は、キャプセルヘの給水の温度や圧力調整のほか、IASCC照射試験に重要な役割をもつ電気伝導度や実際の軽水炉内環境にあわせた酸素や水素の濃度を調整できる機能を備えている。

同時に最大で5本のキャプセル接続して制御照射することが可能で、照射量も適宜調節できることから、効率的な照射試験が行える。また、JMTRは中性子束やガンマ線が高いため、実際の沸騰水型軽水炉では60年間運転した照射量を2年間で照射することも可能だという。

原研では3月8日から約1か月間、こうした特徴を持った照射装置の性能試験等を行い、試験片の温度や水質を計画どおり精度よく制御して照射を行うのに必要な性能が確認できたことから、今後は本格的に照射試験を進める予定だ。


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