[原子力産業新聞] 2002年4月18日 第2133号 <6面>

[日本海洋科学振興財団] 漂流式放射能監視ブイを開発

緊急時の海洋放射能のリアルタイム計測が可能

日本海洋科学振興財団 (浅井冨雄会長) では文部科学省からの受託研究として、原子力発電所等に異常事態が生じた場合の緊急時海洋放射能モニタリングシステムの一環として小型で機動性を有し、リアルタイムで放射性核種の計測が可能な漂流式ブイシステムを開発した。

漂流式ブイシステムは、直径60cm、高さ100cm (アンテナ部分は約2m) のブイの下部に NaI シンチレーション検出器 (256チャンネル) と塩分・水温計、上部には GPS (全地球測位システム) を搭載した重量約50kgのもので全国どこへでも簡単に持ち運びできることが特長。

NaI で検出されたガンマ線は、そのエネルギーに応じて弁別され、5分間計測毎に専用無線 (FM) を通して受信機に送信される(送信は約30秒)。同時に、その場の塩分、水温、GPS によるブイの位置も計測して送信される。

受信したデータはパソコンに取り込まれ、画面上にガンマ線スペクトル、ブイの現在位置、移動速度、その方向などが表示される。

必要な電力は、ブイに内蔵されたバッテリーにより供給され連続で7日間計測できるが、受信機からブイの電源のオン・オフが可能であるため、一定時間毎にブイを呼び出し、計測を実施することで1〜2か月でも使用可能。昨年度の実海域試験の結果から無線到達距離が海上において140km以上離れても十分計測が可能で、同財団では「このタイプは海水の流れとともに拡散するガンマ線を放出する放射性核種をモニタリングできるように設計されたが、もちろん陸上に設置することもできる、また、短時間であれば、錨を使って係留する方法での使用も可能である」としている。

同財団ではさらに、今回の漂流式に引き続いて曳航式のモエタリングシステムを計画中で、2003年度に完成が予定されている。


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