[原子力産業新聞] 2002年4月25日 第2134号 <6面>

[住友金属工業] 中性子吸収に優れた鋼板開発

使用済み燃料貯蔵能力増強が可能に

住友金属工業は17日、中性子吸収性能に優れたボロン入りステンレス薄肉広幅鋼板「NAR-304BN」を開発し、量産体制を確立したと発表した。同社グループでは、住友金属直江津でボロン入りステンレス鋼の角管、狭巾板を製造し、国内の重電メーカーを中心に、これまで約1,200トン以上を供給してきた実績があるが、今回、薄肉広幅鋼板「NAR-304BN」を開発し、量産体制を確立したことで、ボロン入りステンレス鋼について一連の商品系列を整えたことになる。

原子力発電所で発生する使用済み燃料は、発電所内の貯蔵プール (ラック) に貯蔵される。使用済み燃料は六ヶ所村での再処理工場竣工の遅れもあり発電所内に増え続け、ラックの収容体数を上げる必要に迫られていた。このため、熱中性子吸収断面積の大きいボロン (B) を添加したステンレス製ラックが採用されるようになった。当初は、0.6%B添加の SUS304 鋼板から成形した角管を溶接組立てしたラックが使用されてきたが、更に収容体数を上げる目的から最近は1%を超えるB添加の SUS304 鋼板の供給要請がある。しかし、B添加量が1%を超えると材料の靭性、伸び値が低下してくるため、板から角管を成形することは技術的に難しく、現在1%を超えるB添加の SUS304 鋼板製使用済み燃料貯蔵ラックは、従来の角管方式に加え、板組方式によるラック製造も行なわれている。この板組方式のラックには、構造設計上、板厚5mm、板巾2m近い薄肉広幅鋼板が要求される。これに対し、同社はこの程、鹿島製鉄所厚板ミルでの製造技術開発に成功し、量産体制を確立したもの。

今回、板組方式の貯蔵ラック用として薄肉広幅板の開発と量産体制を整えたことで、角管、板組の双方で対応出来る品揃えが出来たため国内の重電メーカーを中心に積極的な営業活動を行なう方針。

なお、原子力発電所からの使用済み燃料は、六ヶ所村の再処理工場が2003年8月竣工を目標に建設が進められているが、処理能力は800tU/年で、国内の原子力発電所から発生する使用済み燃料は900〜1,300tU年といわれており、2010年には全国の原子力発電所内の貯蔵可能量を超過することになる。そのため、国では発電所外に貯蔵する中間貯蔵を2010年からの実施に向けて進めている。


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