[原子力産業新聞] 2002年5月9日 第2135号 <2面>

[フランス] アビニヨンで水化学国際会議

4月22日から25日まで仏原子力学会の主催によリフランス・アビニヨンの旧法王庁コングレスセンター「ポペス・デス・パレス」で「第9回原子炉システム水化学国際会議」が開催された。日本原子力産業会議では同会議に対し、乙葉啓一・元日本原子力発電副社長を団長として電力会社やメーカーの計22名からなる参加調査団を派遣した。

同会議は「原子力発電所の運転実績と水化学の課題」をテーマに1977年より開催されているもの。今回は世界29か国から約300名が参加。「線量低減」「応力腐食割れ(SCC)対策」「腐食抑制対策」「除染」−など、11のセッションで構成され、口頭発表58編およびポスター論文101編の発表を通じて、PWR一次系への亜鉛注入や二次系の高PH運転、BWRへの亜鉛注入や貴金属注入などの実施状況、およびその評価手法−などが報告された。あわせて、「放射線化学ワークショップ」も開催された。

ポスター論文セッションでは、日本からオルガノ原子力部の津田悟氏が発表した「PWR復水浄化系への中空糸膜フィルタの適用」と題する論文が優秀賞を受賞した。

海外のPWRでは、長サイクル運転・高燃焼度燃料への移行に伴い、一次系線量の上昇や炉心軸方向出力分布の異常の抑制が課題となっている。

このため、論文発表の中で、一次冷却材リチウム濃度の増加、B−10濃縮ホウ酸、および亜鉛注入に加え、燃料の除染技術についても試験的な導入が進められている状況や、二次系では蒸気発生器の健全性および性能を確保するため、給水系からの腐食生成物の持ち込み防止に力が注がれている状況などについて、詳細な報告が行われた。

一方、BWRについては水素注入、亜鉛注入、貴金属注入がいろいろの組み合わせで行われているが、線量低減には効果が見られるもののSCC対策としてまだ専門家の間で意見が一致する状況にはない。こうした中、会議では、一層の出力増強や高燃焼度の進展に伴う線量増加の状況、対策の実施に伴う水質、線量、腐食電位の変化など運転経験にもとづく内容をはじめとして、今後我が国の運転に多くの示唆を与える発表が行われた。

次回の水化学国際会議は2004年に英国で開催が予定されている


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